ゴールデンウイークが明けた頃、美容外科医の友人の元へ、30代前半の女性が訪れました。
商社へ勤務しており、とてもきれいなお姉さんです。
「ほうれい線と、顔のたるみをとってください」
友人からすると、そこまで気になる劣化は見られなかったそうですが、彼女は続けました。
「新入社員の子たちと、オンラインミーティングで顔合わせをしたのですが、画面に映る自分の顔に耐えられません!」
三密回避のため、会議や商談がオンラインで行われるようになった、2020年の春。
オンライン環境では、ミーティング参加者全員の顔が画面に並びます。
つまり、若くてかわいい新入社員の顔と、劣化したおばさん顔の自分が並んで映し出されてしまうことになります。
しかも、どアップで・・・!
これがどれだけ女性にとって屈辱か。
女心がおわかりになるでしょうか。
最初は、フルメイクに加えライティングにこだわり、外付けのカメラを別途購入するなど、できる限りの「見栄えの努力」をしたそうです。
しかし、口を開けばほうれい線が、笑顔になれば目じりのシワが目立ちます。
そのたびに、それをセルフチェックさせられるのです。
若い子から「どう頑張っても若さには勝てないのよ、オバサン」
という無言の勝利宣言を、突き続けられるような気持ちになるのです。
実は男性も苦しんでいる
余談ですが、友人は面白い事実を教えてくれました。
「これまで、患者さんの男女比率は1:9だったけど、ここ最近で男性患者さんが急激に増えたんだよね」
男性の施術上位は、ヒゲの脱毛や顔のシミ取り、ほうれい線の解消などで、ヒゲ以外は女性と変わりない内容だそうです。
しかしここへ来て、エイジングケアに興味を抱く男性が急増したとのこと。
そして、その理由が
「リモートワークになり、仕事を休まずに美容クリニックへ行けるようになったから」
だそうです。
これまで、美容に手を出すチャンスを狙っていた男性たち。
コロナにより変化した就業環境を利用し、メンズビューティーの世界へ一歩踏み込んだ、ということでしょうか。
あるいは男性も、自らの顔を客観的に見ることを強制された結果、その事実に耐えられなくなってきたのかもしれません。
これは個人的に、男性美容にとって大きなビジネスチャンスと言えそうです。
ピンチはチャンス!いろいろな意味で・・・
この、リモートワークの影響は、当然、女性も同じ意見です。
とくに「ダウンタイム」と呼ばれる、術後に状態が回復するまでの期間が、女性にとっては大きな悩みなのです。
麻酔や切開による腫れ、むくみ、アザができるため、最低でも1週間は患部周辺を隠す必要があります。
傷口はファンデーションなどのメイクで隠すことが可能ですが、顔全体の腫れは隠せません。
そのため、ダウンタイムの過ごし方で悩み、施術に踏み切れない女性も多いのです。
それが、リモートワークにより、他人と直接顔を合わせる必要がなくなったため、こぞって
「顔面大改革」
へ着手することができました。
「おかげさまで、4か月先まで予約でいっぱい。」
苦笑いの友人ですが、女性たちが美しくなり、世の中に笑顔が増えるのは嬉しいことだ、とも付け加えました。
私は、今回の施術について、詳しく尋ねました。
この女性は、ほうれい線とたるみを気にして来院しましたが、実際に行った施術は、
・ほうれい線
・ゴルゴライン
・マリオネットライン
・頬
以上の4部位(左右計8か所)へ「脂肪注入」を行いました。
友人いわく、
「ほうれい線を気にする人は、そこばかり気にしがち。でも実際は、ほうれい線だけじゃなく、その周辺(ゴルゴライン、マリオネットライン、頬)を改善させることで、ぐっと見た目が変わる。」
そうです。
そこでピンポイントでほうれい線を狙うのではなく、ほうれい線のその周辺も併せて施術することで、明らかな効果を実感してもらうよう、4部位(8か所)への注入となりました。
脂肪注入は、本人の太ももやお腹から採取した脂肪を濃縮し、それを必要部位へ注入し、定着させる方法です。
この脂肪注入により、顔のたるみも改善されるとのこと。
当初、糸を使った「リフトアップ」を希望していた女性でしたが、ひとまず、脂肪注入で様子を見ることになりました。
まずは太ももから脂肪を採取するため、全身麻酔の大作業です。
それでも「若さ」と「美」を手に入れるため、女性たちは果敢に、深い眠りへと落ちていくのです。
施術後、脂肪注入の影響で顔はまん丸になります。
しかし、大きめのマスクで顔を隠せるので、日常生活はそれなりにしのげます。
さすがに、マスクなしでのミーティングや交渉となると、「まん丸の顔」を見た相手は、違和感を覚えるでしょうけど。
とはいえ、時代は「テレワーク」。
思う存分、ダウンタイムを満喫することができるのです。
女の美しさは心から
施術から1か月後、女性は術後検診に訪れました。
顔はスッキリし、気になるほうれい線もかなり目立たなくなっています。
これまで、「シワの改善」といえば、ヒアルロン酸注入やボトックス注入が主流でした。
それが今では「自分の脂肪」を使う時代です。
人工物ではなく、自分の脂肪を注入することで、心理的にも安心して施術に臨めるという女性が増えているそうです。
「先生、私、どう見ても20代じゃないですか!」
「早く会社でみんなに会いたい!!」
そう告げると、彼女は満面の笑顔でクリニックを後にしました。
彼女は、見た目の美しさ以上に、心の美しさを手に入れたのです。
そして自信を取り戻し、ますます精力的に仕事に励むでしょう。
もしかしたら、思わぬ出会いもあるかもしれません。
この女心を理解できる男性は、きっとモテます。
オンライン環境こそ、エイジングケア環境
バリバリ仕事をこなす、30-40代女性の美しさとは何でしょうか。
残念ながら、表面的な美しさは「若さ」の特権です。
しかしその嫉妬のせいで、20代若手女性社員との間に軋轢が生じるようでは、元も子もありません。
30代-40代女性は、20代女性と違い経験と知識、人としての魅力で勝負すればいいのです。
とはいえ、心が萎えてしまってはなかなか本来の力を発揮できないでしょう。
そんな時は、美容医療の力を借りて心に自信をもらうことは、決して恥ずかしいことでは無いのではないでしょうか。
美容医療の進歩は顕著です。
一昔前は、美容整形と聞くと、
「顔が大幅に変形し、失敗がつきもの」
というマイナスのイメージが先行していました。
しかし、今は違います。
医療技術の進歩とともに、わずかな変化で大きな成果を生み出す、さまざまな治療方法が誕生しています。
年齢に関係なく、女性が若く美しくいられることは、男性にとっても喜ばしい限りでしょう。
コロナが落ち着いた将来、同僚の女性が美しくなっていたら、それはもしかすると「大改革」の成果かもしれませんね。

画像:消費者庁「消費者教育のための教材・資料・イラスト」
【著者】浦辺リカ
猟銃・空気銃所持許可
二級ボイラー技士、アーク溶接作業者
ブラジリアン柔術紫帯
