
『人生に疲れた』
『今のままではやりたいことができない』
『叶えたいことが変わってしまった…』
人は様々な理由で、ときに自分の生き方を変えたいと思うものですよね。
今回は、『生き方を変えよう』と思った私自身のエピソードを紹介します。
楽しいけど将来の見えなかったパティシエ時代
私の社会人としてのキャリアは、個人経営の小さなケーキ屋のパティシエとして始まりました。
パティシエの仕事は、私にとっては楽しいものでした。
給与はほぼ最低賃金、まる一日休める日は年間およそ40日ほどという凄まじい環境ではありましたが、当時の私にとって、それらは苦になることではありませんでした。
今が楽しければそれで良かったのです。
当時、将来のことや未来のことに自信がなく、自分の人生を考えることから逃げていた私は、ただ目の前のことだけを見ていたかったのです。
バターと砂糖が焼ける匂いの中で、ただ自分の好きなことに情熱を注ぐのは、過去でも未来でもなく、今この瞬間だけのために生きているのだという充実感がありました。
『将来は見えないけど、今の自分さえ楽しければそれでいい』
そんな風に過ごしていた私の毎日は、とあるありきたりな出来事をきっかけに変わりました。
『自分のため』から『誰かのため』へ
ありきたりな話ですが、私にも結婚したいと思える相手ができました。
喜ばしいことではありましたが、一方で私にとってこれは大きな問題でした。
ケーキづくりという『自分が好きなことのため』だけに生きていた人生を、『好きな誰かのため』の生き方に変えたくなってしまったのです。
これはパティシエを続けるにあたって大きな問題でした。
パティシエの労働環境は、大抵の場合プライベートを犠牲にせざるを得ないものです。
低賃金に少ない休日、そして朝早くから夜遅くまでの労働時間。
自分は大切にできても、自分以外の誰かを大切にするには色々なことが不十分でした。
これではパティシエとして仕事をしている限り、『好きな誰かのため』などという生き方は実現できません。
業界を越えた転職と失敗
悩んだ末に私が選んだのは転職でした。
パティシエをやめて、給与とプライベートを両立できる違う仕事を探すことにしたのです。
働き手の少ない小さなケーキ屋にとって、これはある種の裏切り行為でした。
お世話になったシェフパティシエの期待や、借金の返済に追われる店のことを天秤にかけて、罪悪感で吐きそうになりながら転職活動を進めました。
結果、転職活動は上手くいき、私は大手ブライダル企業の料理人として採用されることになりました。給与は2倍、休暇は3倍です。
これで将来のこともプライベートのことも一安心と喜んだのもつかの間、新天地での仕事が始まってすぐにまた新たな問題が浮上します。
その問題とは、新しい仕事と職場環境があまりにも自分に合わないということでした。
詳しいことは省きますが、私には機能性難聴があり、ガヤガヤと音がする環境の中で他の人の声を聞き取るのが困難という性質があります。
これまでは周りの助けもあり、なんとか騙し騙し仕事をこなせていた私でしたが、新しい職場では常にインカム(ヘッドセットやイヤホンがついた無線機のこと)を装着して、他の人とやり取りをしながら仕事をする必要がありました。
これは私にとって極めて困難なものでした。ただでさえうるさい仕事場で、更に聞こえづらい無線機の声を聞き取るのは、ほぼ不可能でした。
聞き間違いは頻発し、先輩に言われたことの半分もできず、同僚からは蔑みの目で見られました。
毎朝、通勤で電車に揺られながら、自分の選択は失敗だったのではないかと悩みました。
これまでお世話になった人や期待をかけてくれていた人たちのことを裏切って、ようやくここまでやってきたというのに、新天地でこのザマでは誰も報われない……私は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
仕事が好きだったはずの過去の自分はいつの間にか消え、毎日が苦しいばかりでした。
失敗で気付いた視野の狭さ。開き直ってもう一度生き方を考え直した
ある日、機能性難聴で通っていた病院の医者にこんなことを言われました。
「これは私の意見ですけれど、あなたには、今の仕事より他の仕事の方が向いていると思いますよ。人間苦しいと思ったら無理にやる必要はないんです。苦しいことを頑張るより、苦しくないことを頑張った方が、パフォーマンスを引き出せるものですよ」
確かにその通りでした。初めは『好きな相手を大切にするためのお金と時間が欲しい』という理由で始めた新しい仕事でしたが、自分自身の摩耗が大きすぎて、誰かを大切にするよりまず、自分をどうにかしないとおかしくなってしまいそうでした。
一度、諦めてしまえばいい。
そう思い、一旦肩の力を抜いて自分自身のことを整理整頓してみることにしました。
なぜこの仕事を選んだのか、これからどう生きたいのか、そのためには何をすればいいのか……考えた末に出た結論は『食に関わる仕事』にこだわりすぎていたということでした。
視野が狭くなっていたのです。同じ食ジャンルとはいえ技術的には全く関係のない料理人をするくらいなら、わざわざこのジャンルにこだわらずとも、他の業界で一から仕事を探してもよかったのです。
ましてや身体的にも適正があるとは言い難い今の仕事を続けるより、全く異なる業界に飛び込んで、ゼロからキャリアを積み上げたほうが上手くいく可能性が高いはずです。
一度そう気付くと、いてもたってもいられなくなりました。
『自分の選択に失敗したと思ったならすぐに行動した方がいい』
そう思って、すぐに友人のツテを頼り、とあるIT企業について面接を受けられないかを聞きました。
これまで積み上げてきたキャリアとは全く異なる、プログラマへの転職を志したのです。
ゼロからのスタート
2度目の転職は上手く行きました。
晴れてITエンジニアという全く異なる異業種のキャリアをスタートさせた私は、自身の新しい仕事について猛勉強を始めました。
勉強は苦になりませんでした。IT業界は会社間で激しい競争はあれど、業界全体としては成長を続けている将来性のある業界です。
しかも私自身の身体的な欠陥が仕事の支障にならないIT業界での仕事は、私にとって希望の抱けるものだったのです。
新たなキャリアをゼロから積み上げていく分、学習すべきことは山ほどありましたが、希望がある限りはその学習すべき量は問題になりませんでした。
怖いのは、自分の生き方を変えきれないことだけです。
自分の生き方を、自分が望むものに変えられずに終わることは恐怖でした。
これまでのように自分のことだけで手一杯な毎日では、大切にしたい相手ができた今、これから先の人生を後悔とともに歩むことになります。
だから、ともかく行動しました。
仕事終わりにカフェに行き、深夜になるまで延々とプログラムを組み続け、ITエンジニアの開発業務で必要な様々な知識と技術を詰め込みました。
足を止めて、現実が自分の望まない生き方で塗りつぶされるのを黙ってみていることだけは嫌だったのです。
新しいキャリアをスタートさせた今、為すべきことはもう、ただひたすら勉強するだけでした。
現在の私
そのような形で新たなキャリアをスタートさせた私ですが、幸いにも、現在もITエンジニアとしての自身のキャリアを日々重ね続けることができています。
最初のキャリアであるパティシエとは全く異なる業種ではありますが、ITエンジニアとしての仕事は性にあっていて、やりがいと充実感で日々を過ごしています。
また、ITエンジニアとして転職したことで、安定した給与とプライベートを大切にできるだけの時間、そして精神的な余裕を得ることができました。
その結果、好きな相手と自分自身、その双方を大切にできる生活を送ることができています。
当時は恋人だったその相手は現在、私の妻です。
生き方に善し悪しはありませんから、過去の私の生き方を悪いものだったとは思いません。
しかし今の私には、変わろうと自分で願い、そしてつかみ取ることができた「ふたりのことを大切にする生き方」がとても自分らしく過ごすことのできる心地よいものになっています。
まとめ:生き方を変える方法
生き方とは何でしょう。
これは私の主観ですが、生き方とは行動と選択の別名です。
たった一日の行動と選択は、簡単に変えることができます。
ですがそれを何年も続ける長期的な『生き方』として成立させたければ、単なる心がけだけでは不十分です。
将来を共に過ごせるだけのお金と、ふたりの時間を大切にできるだけの余裕が欲しかった私の場合は、『自分の望む生き方』と『仕事』が密接に関わっていました。
これから先の毎日の生き方を変えるには、時に環境を変えることが必要なのです。
環境を変え、行動と選択を変えましょう。そうすれば毎日の小さな『暮らし方』が変わり、やがては自身の根幹に強く結びついた『生き方』にまで、変化が行き届きます。
その過程で、ときには失敗もあるはずです。
ですが、失敗したらすぐに道を修正すればいいのです。
道を変えず、何も行動できないでいると、何も変えることができません。
自分が望む生き方のために、行動し、選択する。
愚直な方法論ですが、生き方を変えるのはただひたむきな行動と選択の積み重ねです。
逆にいえば、行動と選択はいつ、どのようなときであっても変えることができます。
生き方を変えるのにタイミングはありません。自身の強い感情をエネルギーにして、自分の『これから』を自らが望むものに変えていきましょう。
ライター名:sig_Right

プロフィール:元パティシエのITエンジニア。文筆業が好きで、仕事の合間にライターとして各所で記事を寄稿しています。得意な焼き菓子はシフォン。
<Photo:Shelbey Miller>
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