女装することで女性の気持ちがわかる話

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これは、周りの女性たちから全く興味を持たれていなかった年配の男性が、あるときから急に好かれるようになった姿を間近で目撃した、私の体験談です。

マジメでお堅い雰囲気だった歯科医院の院長先生のこと

私が大学1年生だったとき、知り合いの紹介で、歯科医院で歯科助手のアルバイトをすることになりました。


そこは比較的大きい医院で、60歳くらいの院長(男性)が1名と、他に30代半ばの歯科医が1名(女性)、20代後半の歯科衛生士が3名(全員女性)、大学生アルバイトの歯科助手が私を含め4名(全員女性)在籍していました。


この実話の主役は、もちろんこの院長です。
記憶が曖昧ですが、確か院長は当時、大きな歯科医師会だか歯周病学会だかのお偉い役職についていらっしゃいました。


こうして歯科医院の構成メンバーを改めて書き出してみると、30代・20代・10代の女性だけで構成された「俺だけのハーレム」状態ではないかとドン引きしている方もいらっしゃるかもしれません。


確かに、私以外のスタッフは皆モテそうだったので、そう思わせる要素はありました。


さまざまな経験を積んだ今の私なら、「あのときのメンバーって、実は院長の内なる願望が反映されたスペシャルチームだったんじゃ…」と冷静な分析の一つもできるのですが、私は当時19歳でしたので、親子以上に年の離れた男性の気持ちなど想像できませんでしたし、何より院長ご自身が、とっつきにくくて厳格で性的なものを感じさせる雰囲気が一切なかったので、特に邪推はしていませんでした。


院長は、メガネをかけてマジメで寡黙な感じの、佐野史郎さんっぽい雰囲気の小柄なおじさまでした。

ずっと関心を持たれていなかったのに、徐々に女性ウケが良くなる院長

そんな院長のもと働く女性たちについてご紹介しています。


まず歯科医の先生(女性)ですが、治療がめちゃくちゃ早くて正確で、仕事がバリバリできる方でした。
仕事ぶりは男らしいのに話し方が可愛く、幼稚園の先生のような感じで、どこか母性を感じさせる方でした。


ややクレーマー気味の患者さんには突き放すようなことを堂々と言うのに、しまいにその患者さんが先生のファンになってその後指名し続けるようになるという、そんな状況を幾度も見てきました。


歯科衛生士チームは、クールで毒舌だけど患者さんには愛想の良い黒髪ロングヘアのお姉さんと、茶髪セミロングで目の大きい世話好きなお姉さん、黒髪ショートボブで穏やかで優しくて控えめだけど怒らせると怖そうなお姉さんの3名がいました。


歯科助手は、私以外の3名の大学生はコミュ力高めでノリのいい、よくしゃべる元気いっぱいの女の子集団!という感じでした。


私は声優のラジオを聴くのにハマっていたオタク女子だったので、そんな華やかな女性陣から若干浮いていたのですが、地域の忘年会の余興で一緒に着ぐるみを着てピンクレディーの懐メロ「S・O・S」を踊ったことで、一気に打ちとけることができました。


さて、ではこの女性陣から院長はどう思われていたのか?というと…。
全く興味・関心を持たれていない。この一言に尽きました。


例えば、女の子ばかり生まれた家で旦那さんが蚊帳の外となり、妻と娘たちだけでワイワイ楽しくやっている…。
そんな日常の切ないワンシーンと重なるものがありました。


休憩時間に入ったときなど、(もちろん挨拶はしますが)ものすごくドライに院長を置き去りにし、賑やかにしゃべりながら女たちは昼食をとりにスタスタ事務所に向かうのです。


最初のころはイマイチ院内の人間関係がわからず、ただただ「大人の女って怖いな〜」と思っていました。


もしかしたら院長も、40〜50代の頃は大黒柱として尊重されていたのかもしれません。
しかし時代は変わり、スタッフと年も離れていき、女性寄りのコミュニケーションをとることが苦手なタイプの院長は、徐々に距離感が遠くなっていってしまったように思います。


…しかし、そんな立場にいた院長が、ある時期から柔和になり、話しかけやすくなり、あのドライな女性陣からチヤホヤされるようになってしまったのです。


具体的にどんな感じでウケが良くなったかと言いますと、「院長という存在に対する完全なる無関心」から、誇張なしで「そんなお茶目な部分があったんだー、なんか愛嬌あるよね、なんかしてあげたくなるよね、面白いところもっと探したくなるー(笑)」というような感じで、本人不在の休憩時間にも関わらず、頻繁に院長の話題が上がるようになったのです。

女性ウケが良くなったそのわけは…、私だけが知った院長の秘密

確かに先生は、私が入ったばかりのころと比べると雰囲気が変わりました。
堅苦しい雰囲気で壁を作っていたのに、柔らかくなったといいますか、率直にいうと「ツッコミを入れてもO K」な、ちょっと隙のあるキャラになったのです。


また、仕事面でのわかりやすい変化は、医院の環境づくりやシフトの組み方において、歯科衛生士や歯科助手に意見を求めてくるようになったことです。


そして時間を作ってきちんと最後まで話を聞いてくれ、改善すべき点については意見を採用してくれるようになりました。


クールビューティな黒髪ロングヘアのお局さまに聞いたところ、これまで医院のことは、院長が全て決めていたとのこと。
女性陣が何かアイデアを提案しても、「でもさ」「いや、それってさ」と否定から入り、いつも理由をつけて断られるので、女性陣はだんだん提案をしなくなったそうです。


実は私は、院長がこのように変化した秘密を、唯一知っている人間でした。


私と先生は、あまり感情を表に出さない者同士という共通点がありました。
そして院長が持っていた歯周病検査に使う高級なニコン顕微鏡に私が興味を持ったことでよく会話するようになり、「心出し(光源調整)がうまくなったな」「コンデンサの位置が違うぞ」「フィルターを入れるとよく見えるぞ」などと無表情同士キャッキャ話すことが多くなり、仕事終わりに夕食をご馳走してもらう仲になっていたのです。


別にあやしい関係ではないのですが、院長ほど年の離れた人と話すのは面白かったですし、1年ほど前に奥さんを亡くしたばかりであることも聞き、私の亡くなった父に似ていたこともあって、20歳になったばかりの私から見て、よく話してみると可愛げがあって案外面白いおじさんだな〜(失礼)という見方になっていました。


夕食をご馳走になって帰る間際のある夜、院長は遠く離れたスナックに私を連れていきました。
「行きつけの場末のスナックだよ」と言われて行ってみると、入り口に情緒ある外看板が置かれた、まるで昭和にタイムスリップしたかのような昔ながらのスナックでした。


薄暗い店内には、陶器製のピエロのランプや赤いベルベットの布に包まれたピアノが置かれていて、不思議な世界に迷い込んでしまったような雰囲気です。
私は好奇心旺盛な方なので、タバコくさいのもそっちのけで、「すごい!大人の世界だ!」とテンションが上がりっぱなしでした。


院長はしばらくしてから、「じゃあ、僕は準備してくるから」とママに言い、席を離れました。


立派なカラオケセットがありましたので、「先生、歌を歌うのかな」と思って待っていると、小さいステージ(といっても段差も何もない、試着室のように半円カーテンで仕切られているだけの場所)から院長が姿を現しました。


薄ピンクのいかにも昭和っぽいデザインのロングのワンピースを着て、マイクを両手で持っており、仰々しい赤の花の髪飾りをつけ、薄く口紅までつけています。


私は普段、前述した通り無表情であることが多く、淡々として愛想のない人間なのですが、このときばかりはマンガのようにアゴが外れ、目玉も飛び出そうでした。


しかし先生は、医院では見たことのない柔和な笑みを浮かべて、私のよく知らない、おそらく大昔にヒットしたであろう曲を、体を揺らしながら歌っています。
記憶が薄れてしまい、曲名を調べて書けないのが残念ですが、確か女性歌手の曲でした。


「先生、一体これは…。」


私は、まばらな拍手を浴びて席に戻ってきた先生に、問いました。
シュールな絵面ですが、隣にいる先生は頭に花をつけて、ピンクのワンピです。
小柄なので、意外と似合わなくもないのですが…。


…話を聞くと、奥さんが亡くなってしばらくしてから、この遠く離れたスナックで女装を披露するようになったということです。


ワンピースは奥さんのもので、最初は家で、奥さんの気持ちが知りたくてなんとなく着てみたことからはじまり、いつの間にか女装趣味?に走ったそうです。


深くは聞きませんでしたが、先生の性格からしておそらく亭主関白だったと思いますので、奥さんへの接し方について、後悔の念があったのかもしれません。


私に見せた理由は、私なら拒絶しないような気がしたから、だそうです。
確かに、少年漫画「O N E P I E C E」のエネルなみの顔で驚きはしましたが、瞬時に精神統一し、「院長にもいろいろな事情があるのだろう」とすぐ元の無表情に戻ったクチでした。


そもそも私は少年漫画好き&アニヲタだったので、「女装男子」をいろんな漫画やアニメで見ていたことが、このとき有利に働いたのかもしれません。
おそらく高橋留美子先生の「らんま1/2」を熟読していたことが大きいです(女装した愛すべき変なおっさん達が随所に出てくる)。

男性の中にある女性性を解放するとモテてしまう理由

この院長は10年前に亡くなってしまったのですが、「僕が死んだらネタにしていいよ」と言っていたのを真に受けて、素直にこうして書いています。


もちろん女装家の方の中には〈真性の変態さん〉もいると思うのですが(犯罪に走らない限り個人の自由だと思います)、院長の場合は、業界で偉い立場にいてがんじがらめだった自分を解放したかったとか、厳しく接していた奥さんに対して自責の念があり寄り添いたくなった(奥さんの観点を見たくなった)とか、そういう理由で女装を始めたように思われました。


「自分が偉い立場にいることや、普段の自分を知っている人に見て欲しかった」というようなことを言っておられたので、凝り固まってしまった自分を変えるには、縛られている自分を知っている人にさらけ出すプロセスが必要だったのでしょう。


院長が変わり、いつの間にか愛されキャラになったことは、この私が一番驚きました。
院長は別に、モテようとしたわけではなかったはずです。


結果論ですが、なぜこうも女性陣の反応が変わったかというと、院長は女装によって自分の中にある女性性に気づき、その部分を使えるようになったからだ、という結論に達しました。


心理学では、生物学的な男女の分類とは別に、誰しも内面に男性性と女性性という二つの性別が存在していると言われています。


この歯科医院の女性陣をものすごくざっくり分析してみますと、当時女性性が優位であった方々ばかりです。
男と競争して勝ちたいとか、自分が前に出て何かしたいとか、超合理的思考をしているとか、そういうタイプはいませんでした。


歯科医院という、もともと男性が大黒柱になることが多い職場なので、女性性を発揮していた方が仕事がうまく回ったという背景もあるのかもしれません。


一方で院長は、おそらく長い間、論理的で感情を出さないややこじらせ気味の男性性優位タイプだったと思われます。
女性特有の共感によるコミュニケーションは、ほぼ取っていなかったはずです。


時と場合によっては、そういう院長の雄々しい姿が「頼りがい」に映ることもあるのですが、女性陣が院長に無関心になっていた時期は、きっと「頼りがい」よりも「コミュニケーションや受容性」が必要なときだったのだと思います。


バラエティで活躍中の女装タレントさんの中に、「別に私は女になりたいわけではない」と主張している方がおられます。
これは妄想でしかありませんが、中には、抑えきれない強すぎる男性性(攻撃性など)を中和するために女装をしている方もいらっしゃるような気がします。


またはこの院長のように、意図せずとも女装をすることによって女性の観点を見て、自分の中にある女性性(受容性や柔軟性)を解放し、男性性ばかりを使って生きる生き苦しさから脱却しようとするケースもあるのではないかと思います。


女性は、「男性から女性らしさ(穏やかさ・柔らかさ・受け入れてくれそうな部分)を感じると、セクシーだと思う」という意見があります。


自分と似た要素があると女性は安心して警戒心を解きますし、「普段男性的なのに女性的な部分もある」というギャップは、きっとクラクラしてしまうのでしょうね。
歌舞伎で女形を演じられる男性の「日常でも溢れ出てしまう色気」については、よく耳にする話です。


男性の方は、一度余興などで女装をしてみるといろいろな発見があるかもしれません。
男らしさと女らしさの両方の良い部分を使いこなせたら、院長のように知らぬ間にモテるようになっていたなんてことは、当たり前のように起こる現象なのだと今は確信しています。

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東海林 あかね
大学卒業後、対人恐怖症を克服して営業職や管理職を経験したのち、独立してフリーのライターになる。

Photo by Brian Kyed on Unsplash

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