豪華な食事にプレゼント 見栄を張るため彼女の金を盗み続けた男の人生

男なら付きあっている彼女には見栄を張りたくなるものです。

カッコつけて外食の料金を負担したり、高価なプレゼントを贈ることで、愛情を得たいと考えるのは自然なことでしょう。

ただし、それは自分の経済力で賄うことが大前提で、この窃盗事件の被告は彼女にカッコつけるために、彼女のカードを盗んで使っていたのでした。

 

自分のお金で支払われたとは知らず、被害者の彼女は外食、旅行、豪華なプレゼントなど、「リッチな彼氏」との交際を楽しんでました。

さらに被告は、4か国語を話すホテルマンです。

お金で見栄を張らなくてもカッコいい存在なのです。

 

被害者の彼女は1年ほど同棲し、幸せな未来を描いていたかもしれません。

彼氏がカードを盗んでお金を引き出していたと知ったとき、愛情が怒りに代わり裁判まで発展したのでした。

 

彼女とのデート代の為に彼女のカードを盗む男

 

窃盗の裁判を傍聴すると、被告は30歳ぐらいの男性、眼鏡をかけて真面目そうな印象です。

法廷には腰ひもと手錠をつけて入場しました。

身柄を拘束されているのです。

いったい、どのような犯罪を犯したのでしょうか。

 

裁判が始まり検察が罪を読み上げますと、追起訴が30件もあるとのことですが、すべて同一の人物からの窃盗ということです。

同棲していた彼女とのデート代を得るために、彼女からお金を盗んでいたのです。

 

通常であれば、知らないうちにカードを使われても気が付くはずです。

大きなお金が引き出されているならば目立ちますし、メールや明細などで告知されるでしょう。

被告人も最初は小さなお金を引き出して、彼女の様子を探っていたようでした。

そしてバレないことを確信して大きなお金を引き出し、1年で160万円ものお金を彼女から盗みました。

 

そのお金のほとんどは彼女との外食費、旅行費、プレゼント代にあてられます。

彼女はとても大喜びで、彼への愛を深めていったようです。

また被告も、ギャンブルや他の女性との付き合いにつかったことは無いと証言していました。

自分の事に使ったのは、仕事に通勤するためのタクシー代のみという事です。

 

タクシーで通勤した理由も意外なものでした。

被告は仕事に行きたくないので

「タクシーを呼べば強制的に職場に行かなければならないから」

と理由を話します。

ちょっと金銭感覚がおかしい人なのかもしれませんが、仕事に行きたくないと逃げ出したくなる気持ちはよくわかります。

 

きっと気弱なタイプなのです。

私もそうですが他人に強く当たることが苦手で、内向的な性格だとうかがえます。

必死で好かれたいと彼女に貢ぐのはその現れであり、タクシーを使ってまで出勤するのは弱気ながらも責任感がある証拠です。

 

強気で他人とコミュニケーションができる人ならば、彼女に貢ぐ前に別れるでしょうし、仕事もさっさと辞めてしまうでしょう。

気弱だからこそお金で他人の機嫌を取ろうとして、窃盗罪を犯してしまったのかもしれません。

それは被告の証言の端々にもうかがえました。

 

他人に好かれるためにはお金を出さねばならないと考える

 

被告の母親の手紙が朗読されます。

それによると被告は以前にも窃盗を行っており、両親が被害弁償を行っています。

甘やかしてしまったことを後悔していると手紙で述べられました。

たしかに、見栄を張るために他人のお金を盗んでしまう被告のメンタルには、どこか甘さや弱さを感じます。

 

被害者である彼女との外食も

「お金使いたくないから」

と自炊にしたりすればよかったのです。

 

1年も同棲しているのですから、見栄を張ることも普通だったら無いはず。

ですが

「彼女におごる外食費だけで、自分の手取り給料を超えることもあった」

と被告は証言していました。

 

被害者の彼女も、被告のことが見えていなかったのでしょう。

なんでも美味しいものを食べさせてくれる。

豪華な旅行に連れてってくれる。

素敵なプレゼントをくれる、リッチでかっこいいイケてる男性としか見えなかったでしょう。

それはそれで、いくら何でもちょっと・・・とは思いますが。

 

被告は犯行の理由について

「他人に好かれるにはお金を出さなければならない」

と考えていたようです。

被告には、沖縄旅行などに連れて行ったり、高級ブランドのバッグをプレゼントする経済力はありません。

後述しますが、給料は20万円以下なのです。

そのためやむを得ず、愛情を買うために犯行を犯したのです。

 

被告は被告で彼女との生活レベルとの違いを感じていました。

だから、彼女を喜ばせるためにせっせと彼女のカードから現金を引き出し、盗んで、リッチな彼氏を演じていたのです。

彼女の両親から別れてくれと言われるまで、このいびつな関係は続いていました。

 

被告の犯行が判明した瞬間、被害者はどんな気持ちだったでしょうか。

描いていた幸せがガラガラと崩れ、現実が見えてしまったのかもしれません。

カードの残高や不正使用に気が付かなかった彼女ですから、おそらく経済的には被告よりもかなり裕福だったのでしょう。

数十万円単位でお金を盗まれても気が付かない彼女に対し、被告の収入は月20万円以下。

男性として、どこか惨めな自分に耐えられなかったのかもしれません。

 

すべてを失ってから愛される男

 

被告はすべてを失い、拘置所で生活しています。

保釈するお金も、示談するお金もないのでしょう。

弁済予定は月々3万円とのことです。

これは嘘ではなく、精一杯の金額と言うことでした。

 

被告には語学のスキルがあり、英語・中国語・ドイツ語が話せます。

元々ホテルで働いていたということで、再就職先はたくさんあります。

しかし、それでも月収が20万円に到達しないというのですから、ホテル業界の闇を垣間見てしまった気分です。

 

月々3万円の弁済で、160万円をすべて返すには4年以上の歳月が必要です。

まだ若く能力のある被告ですが、その期間地道に働き続けることができるのでしょうか。

出勤するのがイヤだからとタクシーを呼んでしまう人です。

それでもサボるより偉いと思いますが、4年の歳月は長く3万円の返済は重くのしかかるでしょう。

 

 

しかし、被告には支えてくれる人がいました。

現在の彼女です。

拘置所にいる被告は年上の彼女と交際しており、その彼女からは60通もの手紙を受け取っています。

 

なかなか出来ることではありません。

この彼女の愛情はとても深いと思いました。

被告の母親も

「現在の彼女はとても信頼できる人」

と手紙で被告の監督を任せられると信用していました。

 

被告はすべてを失ってから、やっと見栄を張らずに付きあえるパートナーと出会えたのです。

もう外食ばかりしなくても、旅行に連れて行かなくても、高価なプレゼントをする必要もないでしょう。

この新しい年上の彼女は、拘置所にいる被告を好きになっているんです。

私は心から祝福したい気持ちになりました。

 

見栄を張っても本当の愛情は得られない

 

異性からの愛情を得るには、経済力を見せつけても意味がないのではないかと思いました。

女性にとって男性の収入は重要なパラメーターですが、必要以上に見栄を張ってしまうと後から大変なことになってしまうようです。

 

被告は彼女に好かれたくて、外食、同棲の費用などを負担していました。

被害者である彼女は被告の事を経済力のある素敵な男性と思ったでしょう。

4か国語を話し、能力のある男性。

そのお金が自分のカードから盗まれたものを知った時、愛情が裏返り怒りに変わったようです。

 

お金が無い時は牛丼屋でもいい?と言えるぐらいの関係であるべきです。

それでフラれるぐらいなら、それまでの関係だったと諦めるべきでした。

高価な贈り物や旅行に連れて行かなくても、釣り合いの取れた女性には愛されるのです。

 

救いだったのは被告には語学の能力があり、現在の彼女には見栄を張ることができないことです。

それでも愛されているようですから、モテる男性なのでしょう。

 

見栄を張らない生き方をすれば、きっと幸せになれるはずです。

それにしても、4か国語が話せても月収が20万行かないホテル業界って、あまりにもヒドイですね。

そんな仕事、誰だってしたくありません。

 

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野澤 知克
プロフィール:自営業(飲食店)を営みながら、ふとしたきっかけで裁判傍聴にハマった傍聴ライター。

現在は専業ライターとして、裁判所に通う毎日。

事件を通して人間の「生き方」と向き合ってます。
Twitter:@hatinoyado