「男は女より上!」法廷で暴言を吐き負けてしまった男の逆転裁判

喧嘩するほど仲がいいと言われますが、当然やりすぎると危険です。

壮絶な夫婦喧嘩の末、夫が妻の頭骨を折り急性硬膜下血腫に、妻は夫の腹を包丁で刺してしまったという裁判を傍聴しました。

 

裁判で語られたのは、夫婦の凄惨な喧嘩とその原因です。

それは総合格闘技の試合でもめったに見られないような逆転に次ぐ逆転、そして最後に法廷でも逆転現象が起こりました。

被告が

「男は専業主婦よりも上」

と堂々と発言したのです。

 

被害者である妻からの手紙では「それでも別れない」と家族関係を継続する意志があります。

そんな夫婦の生き方に、不思議な家族の縁を感じたのです。

 

「殴りました、刺されました」と自分で救急車を呼ぶ夫

 

喧嘩が日常的に行われている夫婦の裁判です。

今回は夫が被告となっていました。

被告はトラック運転手として、家計を支える男性です。

スラリとした長身で浅黒く焼けた肌がカッコいい40代。

ちょっとだけ伝説的AV男優の加藤鷹に似ています。

 

被告には子供が3人いて、休日には家族の為にご飯も作ってあげています。

なかなか出来ることではないでしょう。

トラック運転手として働きながら、休日には家事をこなすというのは、自分の時間はほとんどありません。

趣味や仕事の疲れを癒すことなど、すべて放棄してきたのではないでしょうか。

 

そして残念なことに被告の妻は何もしない人でした。

スマホばかり見て家事をしない、酷い状態だったようです。

事件があった日も被告は家族の為にお好み焼きを作り、妻は一緒に食べることを拒否しました。

そのような妻の態度に被告は激高して暴力をふるいます。

 

まず被告が妻を殴りました。

喧嘩慣れした夫婦だったので、いつもだったら大事にはならずに終わっていたのでしょう。

しかし今回は妻もやり返します。

被告に馬乗りになり、床に頭を叩きつけるなど反撃しました。

これが最初の逆転です。

 

 

頭をゴンゴン床に打ちつけられながら

「あれ、いつもと違うな」

と被告は感じました。

 

そこで、体制を逆転し妻を下にして頭を殴ります。

ここで被告は妻に急性硬膜下血腫と顔面打撲(全治1か月)の重傷を負わせます。

 

喧嘩が終わり被告は冷静になるためお風呂に入ります。

お風呂から上がったら、妻が包丁を持って立っていました。

被告は腹部を刺され

「殴りました、刺されました」

と自分で救急車を呼びます。

こうして3度の逆転をした壮絶な喧嘩は終わりました。

 

救急隊員が駆けつけた時には、お腹を刺された被告、そして包丁を握りしめたまま立膝状態で固まっている妻がいました。

 

子供を守るため毒嫁の所業を母が証言

 

夫婦喧嘩は子供達にも悪い影響があったようです。

長男と長女は離婚に肯定的で

「離婚した方が良いんじゃない」

「喧嘩するなら別れろ」

と言います。

 

次女は精神的なショックで当時をフラッシュバックするようです。

「パパが帰ってきたらママが殺してしまう」

とおびえています。

 

証人として被告の母親が証言台に立ちました。

妻は被告の母親にも評判が悪く、子供に暴言を吐いていたようでした。

「とにかく言葉が汚く、つねに暴言を吐いていた」

と被告の母親は証言しています。

 

今回の事件で幸いだったのは、この被告の母親が近所に住んでいて、子供たちにごはんを食べさせたり、学校に通わせることができたことでしょう。

 

子供たちを育てるには、もう家族は限界に来ていたのかもしれません。

ここまでの証拠や証言により、妻はいわゆる毒嫁と言われるタイプの女性と推測できます。

家事をせず、暴言を吐き、喧嘩を繰り返して子供にさえ呆れられています。

今回、ついに夫のお腹を包丁で刺してしまい、裁判になったのでした。

 

妻は夫への憎しみも抱えています。

ですが妻は

「裁判は徹底的にやって欲しいが、経済的に別れたくない」

と検事を通じで手紙を書きました。

傍聴席で聞いていた私は

「え!別れたくないの?」

と驚きました。

 

妻は喧嘩を繰り返しながらも、夫に依存しているのでしょう。

私は色々な家族の形があるのだなと思いました。

その思いをさらに強くしたのが、夫(被告)の証言です。

 

子供を愛するマイホームパパではないかもしれない

 

被告の裁判からは子供のために一生懸命働き、子供を育てる父親像が浮かんできました。

ちょっと暴力的なところがありますが、それもすべて嫁から子供を守るための行為だったと思われます。

 

ここまでの裁判の流れで感じたのは弁護士と夫の勝利です。

頭の骨を折り、急性硬膜外血腫になるまで殴ってしまったのは事実ですが、妻の言動から情状酌量の余地があると思いました。

喧嘩痛み分けではありませんが、被告もお腹を刺されているのです。

 

しかし、ここまでの流れは検事の質問で逆転します。

 

検事「今回の事件の発端は?」

被告「子供に暴力をふるう妻が『子供に言うことを聞かせるには、痛くしないとダメ』と言ったので、じゃあお前にも痛くしたら言うことを聞くのか!と怒ったことからです」

検事「え、わかんないんですけど。暴力には暴力ってこと?」

被告「いえ、痛くしないと分からないなら、同じ目にあわせてやろうと・・・」

検事「急性硬膜外血腫ですよ?頭の骨が折れて1か月の重傷なんですよ」

被告「やらなければ、やられると思って」

検事「暴力には暴力って、それ、人として間違ってますよね?」

被告「上下関係をわからせようと思って」

検事「上下?」

被告「外で働いているし、多少は・・」

法廷は静まり返った空気が流れました。

被告にとって専業主婦は立場が下とのことです。

フェミニストの団体が聞いたらめちゃくちゃ怒られそうなことを、スラッと当然の事のように発言しました。裁判官も確認します。

 

裁判官「ちょっと聞きたいんだけど、上下あるの?」

被告「はい」

裁判官「ふーん、あなたにとってはそうなんだ」

 

それまで子供を守り育てるマイホームパパという印象だったのが、この発言により

「あれっ?この人ダメなんじゃない?」

という雰囲気に変わってしまいました。

最後まで逆転を見せてくれる裁判でした。

 

結末

 

この裁判の後には、嫁が包丁でお腹を刺した事件が取り扱われ、被告と被害者の立場は逆転することになります。

やはり法廷では喧嘩痛み分けとはなりません。

救いだったのは、子供たちは自立していて、兄妹で支えあっていることです。

兄妹っていいなあと思いました。

 

何度も逆転が繰り返された裁判でしたが、傍聴していて興味深いのがこの夫婦の関係です。

憎しみあっているようで、どこか相手に依存しないと生きていけないように見えました。

お互いがお互いをストレスのはけ口にしているような関係、結局それって愛なんじゃないかなと思います。

 

私も心の中にストレスを溜め込んですべて放り出して逃げ出したく事があります。

そんなときに、おもいきり喧嘩できる相手がいればと感じずにはいられません。

おとなしい性格だから諦めていますが、この夫婦のように思いっきり喧嘩ができるのが少しうらやましいです。

 

誰かに自分の怒りをぶつけてみたい、それが出来る人って貴重なのでしょう。

急性硬膜外血腫になるほどの暴力や、包丁でお腹を刺すのはやりすぎですが、ほどほどの喧嘩ならやったほうがストレスを溜めるよりより健康的です。

そのような相手がいる生き方の方が、このストレス社会を生き抜くには必要なのかもしれません。

 


野澤 知克
プロフィール:自営業(飲食店)を営みながら、ふとしたきっかけで裁判傍聴にハマった傍聴ライター。

現在は専業ライターとして、裁判所に通う毎日。

事件を通して人間の「生き方」と向き合ってます。
Twitter:@hatinoyado