「納豆は汚物」 ヤバい判例を作ってしまったモテ男のストーカー犯罪

 

ストーカー行為で迷惑防止条例違反に問われた事件の裁判を傍聴してきました。

被告は40歳で長身の男性。

眼鏡が似合っている紳士といった風貌で、ストーカーなどしなくても彼女をゲットできそうなのイケメンです。

しかし、あふれだした恋愛感情からストーキング行為に及び、トラブルとなってしまったようです。

 

今回裁かれる罪状は「女性の車に納豆をなでつけた行為」でした。

この際、裁判所はいったん無罪を言い渡します。

理由は「1回だけではストーカー行為に該当しない」というもの。

しかしその数か月後、被告は一転し有罪判決を受けてしまいました。

 

果たして車に納豆をなすりつける行為は犯罪なのでしょうか、無罪なのでしょうか。

 

ストーカーと納豆と

被告がストーキングしていたのは15歳年下の女性でした。

女性の家に車で行き見張ること3日間、それから10日間の鬼メール、これらの行為がストーカーであることを裁判所はすでに認めていて、略式命令が出ていました。

※略式命令:簡易裁判所で本人同意の元に行われる非公開裁判。有罪になれば前科がつきます

 

その一方で、今回は地方裁判所で公開されている正式裁判です。

争点となっているのは、被害女性の車のボンネットに納豆をなでつけたという行為です。

意味が分かりません。なぜ納豆をつかったのでしょうか?

検察によると納豆をなでつけた理由は、恋愛感情の裏返しによる憎しみということです。

被害女性に対して攻撃的になってしまったのでしょう。

その攻撃方法が納豆を使用した犯行だったのです。

 

被告が納豆を凶器?にした理由は不明ですが、被害女性の立場に立って考えてみるとたしかに効果的です。

ねっとりとした陰湿な精神性を感じさせる納豆を愛車に塗られたらと思うと、納豆好きな人でもドン引きするでしょう。

さらにこの嫌がらせの巧みなところは、洗えば取れるので器物破損にもならないことです。

その知恵や情熱を別の方向性に活かせばいいのにと、思わずにはいられません。

 

とはいえ、基本的には税金を使って議論をする価値があるのか?と思わずにはいられない事件でもあります。

被害女性は怖かったと思いますが、法曹三者が真顔で議論する状況は滑稽そのものでした。

仕事とはいえ、納豆をなでつける行為を法律論から議論を戦わせるなど、日本が平和であることの証拠であるのかも知れません。

そして、すぐに判決はすぐに下りました。

驚くことに、被告人は無罪になったのです。

 

納豆無罪!1度だけならストーキングにはならない

判決がその場で言い渡されます。

裁判官は「主文、被告人を無罪にする」と述べました。

日本の刑事裁判では1000件に1つといわれる無罪判決です。

その理由は、

「ストーカー行為とは繰り返し行われるもので、納豆をなでつけたのは1回のみ。よってストーカーに値しない」

ということでした。

 

少し説明が必要だと思いますが、ストーカー規制法では汚物の送付もストーカー行為に認定されています。

そして裁判官が言うのですから、汚物の送付も1回ではストーカーにならないのでしょう。

そのことを見逃し起訴してしまった検察のミスだったのかもしれません。

 

続けて、刑法では一度裁いてしまった犯罪を再び裁くことはできないと説明がありました。

こうして、納豆を他人の車のボンネットに1度だけなでつける行為は、ストーキングではないという判例が出来上がったのです。

 

被害者側からみれば納得がいかないでしょう。

納豆がなでつけられるという異常な行為が無罪になったのです。

これで調子づいた被告は、次はとろろをなでつけてくるかもしれません。

その次はおくら、その次は山芋と食品を変え続けたら、1回限りということで無罪になりかねない非常事態です。

しかし事態は、これで終わりとは行きませんでした。

 

やっぱり有罪!納豆は汚物である

後日、裁判所に足を運ぶと、なぜかまた、同じ被告の裁判が行われていました。

控訴が棄却され、また同じ裁判を同じメンツで取り行っていたのです。

正直、私にはこの時の法律の手続きはよくわかりませんでした。

検察が控訴したのか、あるいは被告側が別の判決を不服としたのか。

間違いないのは、法曹三者が真顔で、再びこのしょうもない事件で議論を戦わせているという事実です。

 

今回の争点も、前回無罪になった納豆をなでつける行為でした。

しかも今回は、なんと「納豆は汚物か」というとんでもない事実認定を巡って争われていたのです。

国民の税金が「納豆は汚物であるか否か?」という論争に使われているのです。

 

ストーカー規制法2条6項には、

汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

という記載があります。

つまり、納豆は大便や動物の死体と同種であるかが争われているのです。

納豆生産者の方がこの裁判を傍聴したのなら、間違いなく傷ついてしまうでしょう。

 

そして検察、弁護側双方の陳述も終わり、判決が下る瞬間です。

今回はなんと、裁判長の口から逆転の有罪判決が宣告されてしまいました。

理由は被告自身が過去に納豆を車になでつけられた経験があり、その際に「汚い」と感じたことがあるから、というもの。

被告は汚物と認識して女性の車になでつけたので、納豆は汚物である。

裁判所はそのように判断してしまったのです。

かなしい納豆議論の末路でしたが、ここに納豆=汚物と言う解釈になりうる判例が生まれました。

 

逆転有罪ということになるのでしょうか。

複雑な法律の手続きが垣間見られた貴重な体験でしたが、その実情は実にくだらなく、しかしなかなかみられない展開であったと思います。

 

結論:納豆を女の車になでつける男でも彼女が出来る

好意を寄せている女性と連絡を取りたくても、いまいち勇気が出なくて躊躇してしまう人もいます。

「俺なんて見向きもされないし、彼女にはきっと彼氏がいるだろう」

と勝手に自分の中で結論を出してしまうこともあるのではないでしょうか。

 

私はそんな人に勇気を出して欲しいと思います。

なぜなら、実はこの有罪判決を受けた男には、すでに新しい彼女ができていました。

実は裁判中、被告は証言台に呼ばれた際に、

「就職も決まり、新しい彼女もできたので、もう2度と間違いは犯しません」

と証言しているのです。

そして私と同じ傍聴席には、羨ましくなるほど若くてキレイな女性が座っていました。

 

(好きな女性にストーカーして、納豆をボンネットになでつけるような男でいいのかよ・・・)

と、内心毒づいてしまうほどに、複雑な気持ちになってしまいました。

 

ストーカーはいけませんが、被告はきっと納豆のように粘り強く、情熱的すぎる生き方をする男なのでしょう。

その態度には尊敬すら覚えます。

しかし、被告のせいで「納豆=汚物」という判例が日本にはできてしまいました。

ぜひ、その点については生産者の皆様に謝罪して欲しいと願っています。

 


 

【著者】野澤 知克

自営業(飲食店)を営みながら、ふとしたきっかけで裁判傍聴にハマった傍聴ライター。

現在は専業ライターとして、裁判所に通う毎日。

事件を通して人間の「生き方」と向き合ってます。