学生時代の私は、人見知りすぎることに悩んでいました。
初対面の人とは上手く話せず、自分から声をかけるなんてもってのほか。
高校時代からアルバイトはしていましたが、お客さんと触れ合う機会もそう多くはないため、特に改善は見られませんでした。
(このままでは社会に出られないのでは…!?)
そう考え始めた矢先、母の知り合いから、
「私のお店で働いてみない?」
と声をかけられます。
お店というのは彼女がママを務める小さなスナック。場末の、という言葉がよく似合うカラオケ付きの店舗です。
スナックで働くとなれば、否が応でも知らない人と話さなければなりません。
荒療治ではありますが、人見知り克服にはうってつけです。
勉強に差し支えないよう週1回でいいという気軽さもあって、私は二つ返事で誘いを受けました。
スナックについて改めて話を聞いてみると、それまでは若い女の子が2人働いていた、とのこと。
しかし2人とも数か月もたずに辞めてしまったといいます。
「ちょっと癖のあるお客さんがいてね…まぁ、その人だけが原因じゃないんだけど、8割方…ね」
「…どんな人なんですか?」
「…毎日来るのよ」
「…毎日」
「オープンからラストまでいるわ」
「オープンからラストまで…」
そのお客さんは、ママの見立てによると30代後半くらい。
独身で、話の内容は自分自身のことが多く、大変にネガティブなのだといいます。
「スナックだからそれ自体は別にいいんだけど、その人の場合は何だかずっと堂々巡りでね。多分、こっちに言って欲しい言葉があるんだろうけど納得してもらえないのよ。お酒も…ちびちび飲むし」
スナックのママである彼女は、当然ながらコミュニケーションの達人です。
そんな彼女が“少々厄介な相手”だというのですから相当なつわものなのでしょう。
概要を聞き終え、
(私なんかが店に入って役に立つのだろうか?)
という一抹の不安を覚えました。
しかし、そのお客さんがいるからこそ私は新しいバイトが出来るわけです。
(感謝の気持ち、感謝の気持ち)
と自分に暗示をかけつつも、やはりどこかどきどきしたまま、初出勤の日を迎えました。
噂の大クセ男と初対面!
お酒と会話で楽しんでもらう時間を作るのが、スナック店員の仕事です。
本当は人見知り克服などという動機で始めていいバイトではないでしょう。
オープン前の作業段階から、緊張が走ります。
とはいえお店はママと私、2人だけでの営業です。
テーブルなどもないため常にカウンター越しでの接客でいい点も、少しくらいは気持ちを軽くしてくれました。
そして、いよいよ開店のときがやってきます。
看板を出すよりも早く、例のお客さんがお店に入ってきました。
因みに後程わかることですが、これはまだいい方で、シャッターが閉まっている段階から店の前で待っていたことも1度や2度ではありませんでした。
「いらっしゃいませ」
声をかけましたが、もはや私は空気同然。彼は店を見渡し、
「あの子たちは?」
と、元居た従業員の所在をママに尋ねます。
さらっとカウンターの中でも真ん中の、1番いい席に座って、
「何でいないの?」
「どうして辞めちゃったの?」
「今日も会えると思ってきたのに…」
と質問攻め。
その戸惑いようたるや、初めて店に来た私を上回る勢いです。
彼はしばらく動揺していましたが、落ち着いてくると今度は私に面と向かって、
「これからは君がくるの?」
と、嫌悪感を包み隠さぬ口調で尋ねてきました。
「はい!初めまして。よろしくお願いし…」
「あの子たちはね」
私の挨拶を遮ってまで、クセ男はお気に入りだった女の子のいいところを話し始めました。
「すごく素敵な方たちだったんですねぇ」
相槌を打っても効果はなく、ここに彼女たちがいないことの文句は嵐となっていきます。
(すいませんねぇー、今日店にいるのが私で)
私は出勤1時間で、早くも落ち込んだ気持ちになりつつ彼の話を聞いていました。
どうやら彼は、自分の中の予定が狂うということに対して怒りを感じるタイプのようです。
私もどちらかというと事前に予定を決めておきたい性格なので、彼の中にある反発のようなものが全く理解出来ないわけではありません。
しかし、いい大人ですから他人や状況が自分の思い通りにならないことくらい受け入れられます。
(ここまでくると重いし怖いな!)
そう感じ始めた頃、他のお客さんが来店しました。お客さんはみんな気さくで、
「お、新しく入ったの?」
「今日から?じゃあ初出勤祝いに一杯奢ろう!」
「歌はどうなの?聴きたいなぁ」
などと、慣れない私に気を遣ってくれます。
次第に和やかになっていく空気を感じ、
(意外とやっていけるかもな…!)
と思った私がママの方を振り返ると、そこにはあのクセ男がまだ従業員が変わったことについてネチネチ文句を言っている姿がありました。
あからさまに不機嫌な顔をして、ママにはお酒を奢る気配もありません。
数秒前に手にした自信はどこへやら、
(週に1度とはいえ、この人と顔を合わせ続けるのか…)
という不安を覚えました。
結局彼はこの日、1番いい席にどかっと腰掛けたまま、店が閉まる時間まで自分が本来会うべきだった女の子たちの話をしていたそうです。
大クセ男の想像力は限りなく0に近い
クセ男はそれからも、毎日店にやってきました。
自分の中の“お気に入りの女の子と話す”という予定を切り替えることに成功したのでしょう。
彼のする話は、半分が仕事の愚痴、半分が婚活のことでした。
私たちからすればちっとも不思議なことではないのですが、クセ男はこれまで彼女すら出来たことがないのです。
勿論、婚活でもしっかりと失敗体験を積み重ねていました。
「パーティーに可愛い女の子がいたけど駄目だった…」
「結婚相談所でもお見合いが決まらない…」
などなど。
こちらが思わず、
(まぁ、もしあなたがここと同じように女性と接しているなら、当然でしょうねぇ)
と言ってしまいそうな相談を持ちかけてきます。
またある日は、こんな事を真顔で話す始末です。
「本当にタイプの女性がいたからさ、連絡先を渡してパーティー以外の場所で会いたいって言ってみたんだよ。本当はそういうの、禁止されてたんだけどさ。すっごく可愛いからって。自分の空き日も伝えてさ、この後空いてるなら食事でもいいしって言ったのに、終わったらすすっと帰っちゃったみたいで…何でかな?」
(いやいやいやいや、その必死さが怖かったんでしょうよ!何でかな?じゃねぇよ!)
この男は相手の立場で物事を考える、という能力値を0に振り切ったのでしょうか。
相手の女性の恐怖を考えると何故か代わりに謝りたくなったものです。
勿論、相談はママへだけでなく私にも持ちかけられます。
「どうして僕は恋人が出来ないんだと思う?」
毎度のことながら、
(初日の私への態度を忘れているからじゃないかい?)
という言葉を何とか飲み込むのも一苦労です。
具体的なアドバイスをしていいのならば、
「話の幅、あります?」
「どうせ思い通りにならないってわかった瞬間にぐちぐち言い始めてるんでしょ?」
「せめてママには一杯奢るぐらいの気遣いが出来ればいいと思いますよ」
といったところでしょう。
しかしそんなことを口にしてしまえば一巻の終わりです。
彼が気持ちよく愚痴を言い続けられるように、
「そうですねぇ、お顔も素敵なのにどうしてでしょうねぇ」
そう対応し続けること、何と2年!私は毎週末、変わるわけもない彼自身と彼の話題に、バイトを辞めるまで付き合いました。
その内、私も彼のお気に入りになったのでしょうか、褒め言葉をくれるようになりました。しかしそれは
「自己肯定感が強そうだよね」
というもの。
(何やそれ!?)
あらゆる困惑の感情で、手にしたグラスを盛大に落として割りそうになったものです。
さすが、カウンター側の気持ちや疲れを想像することが出来ない男。あっぱれです。
その褒め言葉で女性が喜ぶとでも思ったのでしょうか!
(いくら話を聞くことが仕事のスナック店員といえどお前の対応には飽き飽きしてるぞ!)
(見てみろママの顔を!もう口角も上がらへんくなってしもて…)
結局、私が働いていた2年の間、私やママが他のお客さんの相手をしていると途端に不機嫌になる彼の性質は改善されませんでした。
平等な接客業といえどもこちらも人間です。ネガティブな相談ばかり持ちかけられる相手と話し続けていたいわけがないのですが、彼にとってはこれも理解が出来ないことなのでしょう。
一杯でも奢って売上に貢献してくれるなら、私ももっと積極的に彼の相手をしたと思うのですが…。
結局彼の婚活で、2回目のデートに進んだという話は終ぞ聞くことがありませんでした。
相手の気持ちになることが出来ない人はやっぱり見抜かれるんだなぁと、しみじみ感じたものです。
まとめ:何でも思い通りにしたい男との恋愛は考えられない!
独身のままでも納得されてしまう男性の傾向について、最後にまとめておきます。
・予定変更に柔軟になれない男
・思い通りにならないと不機嫌になる男
・相手の気持ちを想像出来ない男
性格や性質は日々の生活の中にしみついているものです。恋愛対象になる女性の前でだけ隠そうとしても上手くいくものではありません。
みなさんも、思い当たる節があると感じたら要注意です!是非自分を見つめ直して、独身と言っても納得されない、魅力的な男性になりましょう。
【著者】千文鶴子
20代、独身。好きな男性のタイプは「好きなタイプは?」と聞いてこない人。元カメラマン。

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