「パトカーかっこいい」
「おまわりさんお仕事頑張って」
なんてことを素直に思えるのは子供まで。
異論があるのを承知で言えば、普通の大人、ましてや社会不適合系の方にとって、警察とは何かと煙たい存在だ。
業界によっては彼らを悪しざまに呼ぶ者とて、なきにしもあらず。
ポリ公、デコスケ、権力の犬、等々。
そこまでいかなくても待ち伏せで交通違反の切符を切られたり、職質をくらった経験があったりすると、彼らにいいイメージを持つのは難しい。
自分もかつては、そうだった。
考えが変わったのは、エロ仕事をやっていたせいで彼らと否応無しに交流を持ち、さまざまな気づきがあったから。
「こんな卑猥なものを世の中にバラまきやがって!」
などと怒られ、謝りながらもじっくり観察する中で、相手に対する怒りや嫌悪感が消え去り、静かな心でポリスメンと向き合えるようになったのだ。
裸商売をやる上で自分に愚痴があるように、彼らもまた不平不満が山とある。
雑談でそんな話を聞いていると、ただ傲慢で融通がきかないだけの人々ではないことが分かってくる。
そして、彼らとて個性があり一様ではないが、やはり職業ならではの共通した特性があり、接し方も掴めてくる。
一番いいのは、これから語ることを活かす機会のない生き方をすること。
でもそれってなかなか難しいという方のために、自分の体験を通じて警察とのお付き合いのコツを伝えたい。
桜田門に何度も通ったエロ本編集者時代の思い出
エロ本とは、罪である。
一般に言われる「わいせつ図画頒布」というヤツであり、捕まれば2年以下の懲役もしくは250万以下の罰金を科せられる。
それはいいとして(よくないが)、問題はわいせつの定義が不明確なことだ。
一応は社会通念に照らして判断されることになっており、裁判の判例が基準となる。
しかし、当局に何度も呼び出しをくらった身として言えば、その社会通念なるものは警察のみなさまの胸先三寸次第である。
というか俺らがルール、社会通念と言わんばかりの勢い。
要は巷に流布するポルノを全てグレーなものとし、たまに目立つものを捕まえて一罰百戒とする。
そうしてよく言えば公序良俗を保ち、我々から言わせれば業界の萎縮を狙っている。
もちろんエロの作り手としては、できるだけ過激にいきたいという思いがある。
ところがレッドラインが明確でないため、ギリギリのところを攻めていたつもりが警察からするとそれアウト、みたいなことが生じてしまうわけだ。
さらにややこしいのはわいせつ基準にも時代のトレンドがあること。
自分が入社する10年ほど前、コンビニ売りのエロ本で男女の絡みを載せるのはアウトだが、なぜか野外露出は黙認されていた。
当時の編集長は「47都道府県の名所で露出写真を撮ってこい」なんて指令を出し、部下たちを競わせていたそうな。
確かに昔のバックナンバーを見ると鎌倉の大仏前でモデルが脱いでいたりして、今なら一発アウトというか新聞沙汰。
いやそれ以前に、これのどこがエロいのか……と思いつつ、危ない橋は渡るまいと自分は普通に雑誌作りをしていたつもりだった。
そうしたら、ある日警視庁から呼び出しをくらった。
はてさて、何がいけなかったのかしら。
モザイクの薄さか、それとも屋外パンチラか。
結論から言うと、担当刑事は何がわいせつであったのか教えてくれないのだった。
当然思う。
「それ、おかしいだろ」
どこが問題か分からなければ、改めようがないからだ。
だからといって余計なことを言うと、国家権力なめんなよってなノリになり、話がややこしくなる。
しおらしく反省の姿勢を見せて「二度としません」的な誓約書を書く、というか相手が文面を用意しているのでそいつにサインすれば、とりあえずはその場で放免。
で、しばらくするとまた呼ばれ、担当刑事激おこ、ということを繰り返すわけだ。
その時の気持ちを表現するなら、ファックのひと言。
心の中では中指をおったてているのだが、そんな思いもいつしか消えて、優しい瞳で彼らを見られるようになった。
結局、自分はポルノを世に出すのが仕事、そして公僕の方々はそれを取り締まるのが仕事(決してそれだけではないが)。
それぞれ役割上やるべきことをやっているに過ぎず、立場からくる敵味方の関係に過ぎないということを理解したからだ。
治安の守り手たる刑事とは悲しき人々
いや、そもそも思う。
むしろエロを取り締まる部署の刑事というのは、その仕事を心からやりたいと願っているのか。
そうだとすれば結構な変わり者。
違うとすれば、取り調べの席にいた国家公務員一級合格者と思しきキャリア警察官僚はエリートでありながら、やっていることは自分と真逆とはいえ、変わらないということになる。
「アタシは楽しく今の仕事をしているけれど、お前さんたちはどうだい?」
平身低頭しつつそんなことを思っていると、理不尽さに対する憤りが失せてくるのだ。
実際、刑事というのは悲しき人々である。
彼らは人を疑うのが仕事。
犯罪者が言うことをはいそうですかと丸呑みする取調官がいるはずもなく、常に疑念を持つこと自体は不思議ではない。
でも、そんなことを四六時中やっていれば人間性は確実に曲がる。
10年ほど前、富士山のふもとでちょっくらやらかしてしまい、とある刑事に取り調べを受けた際に雑談で聞いた本音を、今でもよく覚えている。
「全く、こんな仕事を選んじまってさ。嫌でも偉そうになっちまうから辞めても他で潰しが効かねえし、ろくなもんじゃねえ」
そのお方は刑事とはいえ鑑識が専門で、普段は樹海で遺体ばかり扱っているらしく、自分に対して「生きてる人間を調べるのは久しぶりなんだよ」ってなことも言っていた。
ちなみにその署の所轄には旧上九一色村も含まれており、パチンコで負けたとか給料安いと愚痴ばかりたれていたおっさん警官たちも、かつてオウムと戦った人々。
てなことで一抹の敬意を懐きつつ彼らに接していたら、しょせん被疑者という立場内でのことではあるが、そこそこ和やかな関係が築けてしまった。
「檻の中で作った人間関係なんてシャバでは一文の価値もない」と喝破した知人もいたが、まさしくその通りで警察や犯罪者と仲良くなることなんて全く無意味。
しかし、ポリスの生態を知るという点では、確実に学びがあった。
それをまとめると、まず彼らと接する際には感情的にならない方がいい。
オイコラ言うのがおつとめの人たちに、わざわざ進んでスイッチを入れてあげる必要はない。
高圧的で理不尽な問いかけにも、「一生誰かを疑って生きていく人生、ご苦労さまです」と思えばこちらが感情的になることもないだろう。
また、被疑者が言うことは基本信じていないと思って間違いなく、嘘はどれだけ感情を込めても響かない。
どうせ吐くなら個人の思いを抜きにした客観的事実、合理的推測を交えて語る嘘がいい。
わいせつで本庁に呼ばれた際、基本話し合いは平行線、というかこちらの言い分に全く耳を傾けられなかったのだが、
「刑事さんは私が全く反省していないとお感じだと思います。
ではまた呼ばれることになるかというと、それ以前にアダルト男性誌という商売自体が終わる方が早いと考えています。
オリンピック前にコンビニからの撤去は確実にあるでしょう。
私は弊誌の最後の編集長を務めるつもりで今の業務を受けたので、終わりは静かに迎えたいというのが本音です」
てな話を言うと、これまで張り詰めていた取調室の空気が、
「ん……」
といった感じで少し弛緩した。
間違っても「お前さんの言うとおり」なんて同意はしないが、納得できる話には事実かどうか別として、まあそれでいいかとなる。
実のところ自分は灰になるまでエロ本を作るつもりだったのでこれは真っ赤な嘘なのだが、ホントのことを適度に織り交ぜると通ったりする、ということだろうか。
そして最後に身も蓋もない話だが、これでも日本の警察は相当マトモな方。
海外には人殺しでも現場でポリスに金を掴ませて解決、みたいな国もある。
いけすかないけど、少なくとも露骨にワイロをよこせとか言わないだけまだマシか……。
どうしても警察と向き合わない場面に遭遇したら、そんなユーラシア大陸のごとく広い心で彼らと接してみよう。
少なくとも不快な思いが和らぎ、月日が経てば笑って過去を振り返られるはずだ。
そう、今の自分のように。
【著者】神坂縁
ライター、編集者、翻訳者。
週刊誌記者を経て某中堅出版社に入社。
雑誌の製作に携わっていたが、十数年勤めた会社で内紛が起こったことを機に退職&日本脱出を決意。
現在は国外の通信社に勤務し、アジアの政治・経済に関するライティングを本業としている。
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