借金を背負いながら全く知らない女子高生の家に泊まり込む男の生き方

残金76円しか無いのにカラオケを歌って逮捕された男の裁判に足を運んできました。
罪名は詐欺罪。30歳の気弱そうな男性です。


9年間地元で働き、彼女もいましたがフラれてしまいます。
そこから彼の人生が狂いました。


店のお金を盗み、母親からもお金を盗みます。その金額は合計で80万円。
そのお金を持って北海道に渡ります。


北海道ではラインで知り合った女子高生の家で生活します。
その家は母子2人暮らしで、2か月間生活しました。


盗んだ80万はすべて使ってしまい、残ったお金は76円でした。
警察からも女子高生の家に泊まり込むのは青少年保護条例違反ということで追い出されてしまいます。


そして、たどり着いたのは旭川市のカラオケ居酒屋でした。
そこで歌を歌い、酒を飲んだりした後、無銭飲食で逃げ出します。
行動力は人一倍ある彼の生き方は、反面教師として興味深い物語でした。

9年間どんぶり屋で働いた男

出身が神奈川県の男性が被告でした。
年齢は30歳で罪名は詐欺罪。
払うべきお金を持たずしてサービスを受けたという罪です。


神奈川県のどんぶり屋で9年間働いていたという被告。
月収は20万ほどでしたが、実家に5万円入れており、彼女もいました。
節約さえすれば充分生活できる収入だったと思われます。

ですが、被告には300万ほど借金がありました。
その使い道は遊ぶ金だったとのことです。
月収20万円の男に300万を貸してくれる所があるのか謎でしたが、被告は「友人から借りました」と告白します。


被告は派手に飲み食いして遊んでしまう性格で、神奈川にいた時も、何度か無銭飲食をしていました。
その被害弁済はすべて母親が肩代わりしています。


遊び好きで月収20万円で30歳になってしまった被告は、ついに彼女にフラれてしまいました。
その出来事はかなりの衝撃だったでしょう。
他人から見ればフラれても仕方ないと思いますが、相当なダメージだったと思われます。


被告は9年間働いたどんぶり屋を辞めてレジから70万盗みました。
さらに母親のサイフから10万円盗み北海道に渡ります。

ラインで知り合った女子高生に会いに北海道へ

被告はなぜ北海道に向かったのかと言うと、スマホアプリ「LINE」で知り合った女子高生がいたからでした。


女子高生のいる街は人口2万人ほどの農村地帯にあります。
遊び好きな被告にとって寂れた土地と感じたでしょう。

女子高生の家は母子家庭で、被告はそこで2か月ほど生活します。
母親が被告の事をどう思っていたのか気になりましたが、おそらく良くは思っていなかったでしょう。
神奈川から30歳の男が女子高生の娘の所にやってくるのはどう考えても異常です。


そして被告の居候生活は突然終了してしまいます。
おそらく母親が呼んだと思われる警察がやってきて「青少年育成条例違反(※)だから出ていくように」と言われてしまったのです。
※青少年育成条例違反:青少年の健全な育成を目的とした条例。各地方自治体が定めている。


住むところを失った被告は困りました。
盗んだ80万円はほとんど無くなっていたからです。


被告の残金は76円しか残っていませんでした。
裁判官もこれには驚いて「え!何に使ったの?」と聞いてしまいます。


「酒や、風俗に使ってしまいました」
「80万を?2か月で??」
「はい、1日で10万使う日もありました」


法廷には静寂な空気が流れました。
被告の発言によって皆絶句してしまったのです。


盗んだ金とはいえ、収入が無いのでしたら大切に使うべきでしょう。
そんなことも考えずに、ただ欲望に任せたまま、遊んでしまったのです。

残金は76円の男がとった行動とは

盗んだ80万は遊びで使ってしまった被告。
居候していた女子高生の家があるのはたった2万人程の街ですが、電車で1時間ほどの所に人口30万人ほどの旭川市があります。
旭川市なら風俗や飲み屋も沢山ありますので、被告も思う存分遊ぶことができたでしょう。


自業自得ですが警察により女子高生の家を追い出された時点で、被告の財布には76円しかありませんでした。
頼るべき人もおらず、北の地でほぼ無一文になったのです。


私はこの時の被告の置かれた状況を想像すると「苦しいなあ」と思います。
これが神奈川だったら母親に土下座するなり、300万円を貸してくれた友人に相談するなりできたでしょう。


しかし、被告は職場から70万、母親から10万円を盗んで北海道まで逃げて来た身です。
頼れる人はもうどこにもいません。


その様な状況で、被告は電車代640円を役場で借りて旭川市へ向かいます。
「飲み屋で知り合ったバーテンがいたから」という理由ですが、そのバーテンの連絡先も知りません。


つまり、旭川市で飲んでいれば、偶然その知り合ったバーテンとばったり出会えるかもしれないと思ったのです。


そして被告は無銭飲食をやってしまいます。
カラオケ居酒屋で3曲ほど歌ったとのことでした。


私は傍聴していて、歌うなよ!と思いました。
無銭飲食なんだから、遠慮するべきという考えは被告には当てはまりません。
そして、ここのカラオ居酒屋の店主が被告に対して怒り、警察に届け出たということです。

被告はそれから数件の店で無銭飲食を繰り返し、最後にはお金が無いのにビジネスホテルに宿泊します。
そこで警察がやってきて被告は北の地で捕まってしまったのでした。


裁判官は被告にこれからの生き方を質問します。


裁判官「出所したらどうしますか?」
被告人「母の下に戻り更生します」


裁判官「どうやって?」
被告人「大好きなフットサルやスポーツ観戦をやって、自暴自棄にならないようにします」


裁判官「仕事はどうするの?」
被告人「介護とかやります」


この受け答えを聞いていても感じるのですが、被告には「最後は母親が何とかしてくれる」と信じているように思われます。
どんなにやけくそになって遊んでも、母親が弁償したり謝ってくれていたのでしょう。


被告からは30歳の男が人生の岐路に立っている危機感を感じませんでした。
裁判官も法律を離れ、最後に説教をします。


「自分に甘く、イヤなことがあるとキャバクラに行って酒を飲んでしまう。そんな人間を裁判所が矯正することはできません。きっと繰り返すでしょう、このままだとあなたは独りぼっちになっていくはずです」
裁判官のこの言葉が最後まで心に残った裁判でした。

まとめ:人生は続き現実は変わらない

イヤなことがあると逃げ出し、母親に頼りっきりの甘い男でした。
執行猶予が付いたので、すぐに刑務所に入れられることはありません。
ですが、裁判官の言う通りきっとまた無銭飲食を繰り返すでしょう。


私がそう感じたのは被告人のこれからの生き方を問われたときの答えがあまりに稚拙だったからです。


「フットサルやスポーツ観戦をして自暴自棄にならないようにします」
「母親の下で介護とかして更生します」


介護「とか」という言葉に、まるでリアリティが感じられませんでした。
母親が許してしまったら、また同じ生活を繰り返すのでしょう。


今回は母親が弁償を拒んだので正式裁判となってしまいましたが、そのまま勘当してあげるべきだと思いました。
被告人の生き方を考えれば、母親の愛情は害悪でしかありません。


少なくとも被告には同じところに9年間勤めることができる根気と、LINEで繋がっているだけの北海道の女子高生の家まで行く行動力があります。
執行猶予なんてつけずに、刑務所で人生勉強をしたほうが被告の為になるはずです。


若さを失い、彼女にもフラれてしまった被告の心情は少し同情します。
ですが、酒を飲んで風俗に行っても現実は変わりません。
自暴自棄になって遊びまくっても、気持ちはスカッとするかもしれませんが何も変わらないのす。


私もいやなことが続いて、酒でも飲まなければやっていけないという状況になることがあります。
ですがこの裁判を傍聴して、ほどほどにブレーキをかけるようになりました。
酒を飲んで忘れても、現実は何も変わらないからです。
そのことを学べた裁判でした。

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野澤 知克
プロフィール:自営業(飲食店)を営みながら、ふとしたきっかけで裁判傍聴にハマった傍聴ライター。現在は専業ライターとして、裁判所に通う毎日。事件を通して人間の「生き方」と向き合ってます。

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