一発逆転を夢見た負け犬たちが挑む「ブログで稼ぐ」というゲーム〜カイジ 人生逆転ゲーム〜

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真希ちゃんと康介君に会うのは久しぶりだった。

私たち3人は一時期、妻子とともに地方移住してきたプロブロガー・沼田の元に集っていた仲間だった。

生まれてこのかた小さな地方都市から出たことがなく、地元の男性と結婚し、ワーキングマザーとして日々奮闘している真希ちゃん。

都会のサラリーマンだったのに何もかもを捨て、沼田を追いかけて地方移住してきた康介君。

首都圏からUターンし、離婚してシングルマザーになった私。

 

私たちのバックグラウンドに共通点なんてないけれど、沼田が主宰するイベントや、彼が司会を務めるセミナーにはそれぞれ必ずと言っていいほど参加しており、私たちはそうした会場で何度も顔を合わせるうちに親しくなった。

 

年の瀬も押し迫ったこの日、私たちはこの1年を総括しようと、連絡を取り合って3人だけの忘年会を開くことにした。

互いに仲間内だから話せることを大いに暴露しあい、沼田を追いかけていた自分たちのバカさ加減に乾杯するのだ。

最初に私、次に真希ちゃん、最後に康介君の順番で、私たちはかつて崇めていた沼田が中身のない詭弁師であることに気付き、離れていった。

 

真っ先に沼田から離れて批判を始めたのは私だったが、彼の実態にいち早く気づいていたのは康介くんだった。

「俺、本当は分かっていたんですよ。ここに移住して1ヶ月も経たないうちに、沼田が信用ならないってことは。

非常識だし、無責任だし、実業家としては実態も実力もないって、かなり早い時点で気がついてました。だけど、気づいていても認められなかったんです。

だって、俺はもう沼田の『会社なんてオワコン。まだ都会で社畜してるの?』という煽りに感化されて会社辞めちゃってたし、それまでの生活を捨てて移住もしちゃったし、ネットで沼田を持ち上げる発信も散々してきて、今さら引っ込みがつかない状態でした。

沼田をとんでもない奴だと認めることは、そんな奴を信じた自分が間違えていて、信じて行動してきたことが過ちだったと認めることですから。

だけど、そんな俺を支えてくれる人たちや、諫めてくれる人たち、虚業家じゃない本物の実業家の方との出会いがあって、やっと認めて、離れることができました。すごい時間かかりましたけど(笑)」

 

康介君の偽らざる心情の吐露を聞いて、私と真希ちゃんは安堵した。

先に抜け出していた私たちは、それまで沼田に追随してネットで荒ぶり、多くの敵を作っていた康介君を心配していたのだ。

康介君はネットに実名顔出しをしているばかりか、住んでいる地域や家の外観まで公開していた為、彼の振る舞いはリアルな田舎暮らしの妨げになるばかりか、安全上も問題があるのは明らかだった。

 

ネットに名前や顔を出していることの危険性について話題が及ぶと、康介君は次のように続けた。

「そりゃ、後悔はしてもしきれません。僕の名前や顔は匿名掲示板にも載せられて、もう一生消えませんから。これぞデジタルタトゥーってやつです。

実は、俺もうネットやめようと思ってるんです。ブログから入ってくる収益もバカにならないから捨てるのは惜しいけど、もう少ししたらブログもSNSアカウントも全部消すつもりです」

思い切りの良さに感心する一方で、そうやって極端から極端へと走る思い込みの強さが、まだ少し危なっかしいような気がした。

 

一時期「プロブロガー」なるものに憧れて、「ブログで稼ぐ!」を目指していた私たちの中で、最もブログの収益化に成功していたのが康介君だった。

ブログからの収入一本で暮らしていけるわけではないけれど、アフィリエイトや有料コンテンツの販売で、家賃と水道光熱費くらいはどうにか稼いでいると言い、それはブログのマネタイズに失敗した私たちから見れば大した成果に見えた。

 

もともと日記としてのブログに10年以上親しんできた康介君と違って、私と真希ちゃんはブロガー初心者だった。

子育てに忙殺されるばかりで、パッとしない人生に倦んでいた真希ちゃんは、沼田が講師を務めるブログ教室に参加し、それまで文章など書いたことがないのにブログを書き始めた。

その根底にあったのは、これで人生が変わるかもしれないという期待だ。

私はブログ教室には参加していないが、その頃取り組んでいたセミナー事業の集客のためにブログを書き始めた。

私も真希ちゃんと根っこは同じで、子供たちの母親であること以外に何者でもない自分に焦りを感じていたのだ。

 

人生を変えたかった。お金を稼ぐ必要もあった。その二つは、恐らく当時セミナーで顔を合わせていた沼田の取り巻き全員に共通している。

 

私たちがブログを書き始めたあの頃、周辺には沼田に感化されたり、指導された、にわかブロガーが大勢誕生していた。

それぞれが独自路線で情報発信をするならいいのだが、揃いも揃って沼田の劣化版コピーなのだから人気が出るはずもなく、市場はあっという間に飽和する。

沼田っぽい語り口で、観光名所や穴場スポットを紹介したり、飲食店の食レポを綴るのだが、変化の少ない地方都市で数十人が同じことをすると必然的にネタが被る。

また、筆力の無い者が自分語りをしたところで、名もない一般人の人生の軌跡など読めたものではなかった。

 

文体にもコンテンツにもオリジナリティが無いのだから、当然どのメディアもブログもPVが伸び悩んだ。

沼田の弟子や仲間として一時的に注目されることで、瞬間的にPVが爆発することはあっても、結局のところ本人たちに読者を惹きつける魅力が乏しいままなので、長続きしないのは当然のことだ。

現実の厳しさを知る前の私たちは、ブログを書くなんて簡単なことだと思っていた。

今まで他人に読ませる文章を書いた経験など無いのに、日本語が書ければ文章も書けるものだと考えていたのだ。

 

誰でもそうなのだが、書き始めたばかりの頃は発信したいことが自分の中に溜まっており、書くテーマに事欠かない。

しかし、思いの丈を吐き出してしまうと、自分にはこれ以上書くべきことも無ければ、書きたい衝動そのものがすっかり収まってしまっていることに気づいて、キーボードを叩く指が止まってしまう。

ブログで稼ぐには量をこなせ、と沼田から指導されているのだが、何か書かなければと焦るほどに遅々として進まない。

そこで、

「やっぱり書けない。もう書くことがない。自分には向いていなかったのだ」

と、早々に諦めがついて放り出してしまえば、まだ怪我は少なくてすむ。

しかし、「何でもいいから書こう。書いてPVを取ろう」と思い詰めると、自分や家族の恥となるような非常にプライベートな内容を赤裸々に書いてしまったり、自分と関わりのある人が読めば、ひんしゅくを買うような意見を書くなど、書くべきではないことを書き始めて現実の生活に影響が出てしまう。

そして、そこまでしてもブログで稼げるようにはならず、バカを晒した結果、いたたまれなくなって消えていく人がほとんどだった。

 

現実の生活が充実している者たちは、ブログやウェブメディアを収益化することの厄介さに気付き、「ブログで稼ぐことを目指すより、普通に働く方がよほどいい」と見切りをつけて去っていった。

ブログで稼ごうと奮闘し、少なくないお金と時間を浪費した後で正気に戻った真希ちゃんは、家族との時間を大切にする為、ブログをやめた。

そして、間も無く結婚と再就職を予定していた康介君も、大切な人に迷惑をかけない為に全てを削除すると言う。

2人とも憑き物が落ちたようにさっぱりした顔をしていた。

 

書き続けているのは私一人だ。私はブログで稼ぐことはできなかったが、いつしか書くことそのものを楽しめるようになっていた。

3人で自分たちの過去を笑いあいながら、私は丁度見たばかりの映画「カイジ 人生逆転ゲーム」を思い出していた。あの頃の私たちはまるで、エスポワール号に集められた負け犬たちみたいだ。

あの場に集まり、ブログで稼ごうと目論んだ人間の多くが負け犬だった。私たちにとってブログは人生を一発逆転させてくれる希望のゲームだったのだ。

 

けれど、それは勝てるはずのないゲームだった。「ブログで稼ぐ」と言うプロブロガー本人が、ブログで稼いでいるわけではなかったのだから。

「ブログは稼げる」とうたうことで人を集め、「ブログの稼ぎ方」を売ることで稼いでいるのだ。良心があれば真似できない。

人としての道を踏み外せない私たちは「ブログで稼ぐ」ゲームから降りたが、真希ちゃんはその後、会社で給料をもらえるありがたみに気づいて仕事に邁進し、昇進したことで給与も上がり、言動にも自然と余裕がにじむようになった。

康介君はしっかり者の女性と結婚し、再就職もして、一通りのものを手に入れた今では立派な勝ち組だ。

 

そして、私は文才を認めてくれる男性と再婚し、今もこうして書き続けている。

そう考えてみると、エスポワール号を降りた私たちはちゃっかり人生逆転しているんじゃないだろうか。

 

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【著者】マダムユキ

ネットウォッチャー。

最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。

リンク:http://flat9.blog.jp/

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