危険ドラッグ(違法薬物)で逮捕され続ける男 覚醒剤にまで走ってしまうその理由と人生

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ストレス社会を生き抜くには、ストレス解消法を持たなければいけません。

溜まっていくストレスを抜かなければ、人はいつか潰れてしまいます。

私のストレス解消法は裁判所に行き裁判を傍聴すること、ここではさまざまなストレスの顕在化が見られます。

 

暴力、万引、窃盗などもストレスが原因という事も多く、その中でも特にやってはいけないのが覚せい剤です。

覚せい剤の中毒性は強く、刑務所を出ても5年以内に半分がまたやってしまいます。

「絶対にもうやりません」と法廷で宣言しても、再犯を重ねてしまう人は少なくないのです。

 

ある覚せい剤取締法違反の裁判でも同じでした。

被告は立派に職をもち、家族を守ろうとしていましたが、ストレスから覚せい剤に逃げてしまいました。

ですが、このことに深く反省し、家族も被告を守ろうとしていたのです。

そんな被告に対して、裁判官だけが被告を強く避難し続けた裁判でした。

 

覚せい剤使用の過去を乗り越えられなかった男の生き方とストレス

法廷には丸坊主に刈り上げた男。

直立不動に気を付けをし、検察の読み上げる罪状に「間違いありません」と答えます。

これまで多くの覚せい剤取締法違反の裁判を傍聴してきましたが、ここまで反省している態度を見せる被告は初めてでした。

被告は覚せい剤を使用し、高速道路で事故を起こします。

これまでの生き方が弁護士により読み上げられました。

被告は18歳で子供をさずかり、妻と子と母親がいます。

20歳で覚せい剤を初めて使用し、25歳の時に捕まります。

30歳になった今は大工として働いており、25歳からの5年間は覚せい剤を使用せずに生きてきました。

こんなに長期間覚せい剤から離れられたのは中毒状態から抜け出ていると判断され、裁判では有利に働きます。

 

被告が5年ぶりにやってしまったのは家庭のトラブルが原因です。

その原因は妻でした。

妻はお腹に子供がいるのですが、離婚すると言っているのです。

被告はどうにかして妻の離婚を思いとどめようとしますが、妻の意志は硬く、壊れていく家族。

むしゃくしゃして覚せい剤に手を出してしまいました。

 

そして今、神妙な顔で裁きを受けています。

眉間にしわを寄せ、呼吸すら感じさせないピシッとした立ち姿。

弁護士は証人を要請しました、被告の母親です。

 

母親の誓いに冷ややかな目線

被告の母親も特徴的です。

「これから被告が覚せい剤を使用しないように、監督できますか?」

という弁護士のパスに

「はい!私が責任もって監督いたします!」

とスラスラ答えていました。

普通、証人に呼ばれる親は緊張して、声も小さくなりがち。とっくに成人している被告の親になると「そんなこと言われても・・・」という気持ちがちょっと入ってしまうものです。

 

どうも裁判慣れしているお母さん。

実は被告人の経験があったのでした。

検察が

「でも、あなた20年前に覚せい剤やっていますよね?」

と言うと

「今はやっていません!」とハッキリ答えていました。

 

被告が覚せい剤に手を出したのは、この母親の影響があるのかもしれません。

20年前、被告が10歳の時に母親が覚せい剤で捕まっているのです。

このことが被告の人生に覚せい剤が入り込んでしまった原因なのは間違いないでしょう。

そのことを母も悔やんでいるようです。

反省の念、子供に悪影響を与えてしまったこと、さらには今回の件で孫にまで被害が及んでいます。

なんとか執行猶予を取ろうと、必死に質問に答えていました。

 

ただ、家族に覚せい剤で前科がある人がいるというのは厳しい材料です。

証人としての説得力もやや損なってしまいます。

母親はそれでもがんばって執行猶予を勝ち取ろうとしています。

家族や子供の為にも母親ぐるみで裁判に向かっていたのでした。

 

「やさしいおとうさんを許してあげて」という子供の手紙にまったく流されない裁判官

弁護人が裁判官の許しを得て、被告人の子供からの手紙を朗読しました。

12歳の子供の手紙、その内容は

「やさしいおとうさんを、どうか許してあげてください」

というものでした。

聴いていて、グッと来てしまいます。被告人も震えていたでしょう。

子供はすでに、今回の件でいじめを受けていると弁護士が言います。

 

この子供の為にも執行猶予を勝ち取らなければいけない被告。

ですがもう一つマイナス材料がありました。

覚せい剤の入手先をしゃべっていないのです。

「なぜ、入手先を話さないんですか?」

という質問に

「話したくても、子供の事を考えると話せません」

と被告は言います。

 

「入手先の事を話してしまうと、相手はどんな手段で報復してくるかわからない。子供にも危害を与えてしまう可能性があります。どうしても話せません」

と1人で耐えてました。

それにより実刑になってしまっても仕方ない。そんな覚悟の言葉です。

検事もこれ以上深く追求する姿勢は見せず「これは執行猶予かな?」という雰囲気が流れます。

それを許さなかったのは裁判官でした。

 

「でもさあ、なんで子供がいるのに覚せい剤やっちゃうの?」

「・・・・」

「普通、子供の事を思ってるならやらないよね?」

「・・・・」

「むしゃくしゃするのはわかるよ、でも、普通覚せい剤はやらない」

「・・・・」

 

裁判官によるネチネチとした質問攻めです。

検察の質問よりも厳しく、それまでのムードは吹き飛びました。

被告はなにも答えることが出来ません。それでも質問は続きます。

「ねえ、なんで?子供がいながら、覚せい剤やっちゃうの?なんで?」

 

ああ、これは裁判官の愛なのかもなと思いました。

何度も刑務所を出入りしてしまうような別の被告には見せない態度です。

傷口に塩を塗り、冷徹な厳しさで、被告に再犯をさせないようにと教育しているのです。

 

それほど覚せい剤の中毒性、再犯率は高いのでしょう。

5年間やっていなくても、いつまたやってしまうのか分かりません。

「ぜったいに、もうやりません」なんて言葉を信用することはできないのです。

子供の為にも、子供をダシにつかってさえも、被告が二度と覚せい剤に手を出さないようにと叩き込んでいるのでしょう。

今回もまた、とても見どころの多い裁判でした。

 

まとめ:絶対なんて無いのだから

ストレス社会で生きるには、ストレスの抜き方を身につけなければいけません。

問題はそれが容易にできるかどうか。法律に違反していないかもポイントです。

 

被告のように覚せい剤を知ってしまったら、その誘惑にストレスを感じるたびに闘わなければいけないのです。

もっと簡単なストレス解消を持たなければ、精神の健全さは維持できません。

 

この裁判を傍聴して、私はストレス解消法をいっぱい持ちたいと思いました。

運動やアウトドア、グルメやショッピング、何でも構いません。

そういったのを沢山持つ人を遊び上手、遊び人というのかもしれませんが、ストレスを抱えない人はやっぱりモテます。

 

ストレスを抱えない為に遊びましょう。

やりたいことを我慢するのはいけません。被告のように、最後のストレス解消法が覚せい剤だったのなら、その人生は苦しすぎます。

 


【著者プロフィール】

野澤知克

自営業(飲食店)を営みながら、ふとしたきっかけで裁判傍聴にハマった傍聴ライター。

現在は専業ライターとして、裁判所に通う毎日。

事件を通して人間の「生き方」と向き合ってます。

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