インフルエンサーは職業になるのか 勘違いした若者と利用した若者のそれぞれの人生〜デス・ゾーン〜

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「長きに渡って付き合ってきた彼女にプロポーズしました!」

 

という小山くんの結婚報告をFacebookで見た。

私が小山くんと知り合ったのは、かれこれ7年前だろうか。とすると、当時大学生だった彼も28歳か。長く付き合ってきたという彼女が彼と歳が近いのであれば、結婚を考える年頃なのだろう。

 

私と小山くんとの接点はブログだ。

7年前、彼は地方移住で名をあげたプロブロガー・沼田の取り巻きの一人だった。

彼は沼田のブログ講座に参加し、そこで知り合った社会人たち数人と地元のグルメ情報サイトを作って記事を書いていた。

私が沼田司会のセミナーに参加し、夜の懇親会でカツオのたたきをつついていた時に、「まだ学生なんだけど、すごい子がいるの。きっとゆきさんのお役にも立つよ」と、知人から紹介されたのが出会いだ。

 

大学で情報システムを学んでいた彼は、確かに役に立つ知識と技能を持つ子だった。

当時の私はある観光事業に関わっていたのだが、丁度WEBサイト制作に明るい人材を探していた。そこで、その事業で関わりのある人たちに小山くんを紹介したところ、彼は瞬く間に大人たちに気に入られ、ほうぼうで様々な仕事を請負うようになった。

 

けれど、小山くんは「学生起業家!」などと鼻息を荒げて自称することはなく、どこまでも謙虚で堅実だった。

彼はどんな仕事も断らず、大人たちには

「僕は学生なので、ご飯を食べさせて貰えればいいですよ」

と言い、金銭は受け取ったり受け取らなかったりしながらも、酒と食事は遠慮なくご馳走になっていた。

そして、そうやって積み重ねた仕事の実績はしっかり自己PRに利用していた。

彼は東京での就職を目指していたのだ。

 

東京の生活をくさして炎上するプロブロガーと親しくしながら上京を目指すのは矛盾しているように思えたが、どうやら小山くんは、沼田に共感しているわけでも同調しているわけでもないようだった。

 

小山くんの作ったWebメディアは体裁が整っていて立派だったが、短期間でアクセスを集めて収益化に成功したのは、彼らの実力というよりは沼田の援護射撃のおかげだ。

沼田が彼らのメディアを自身のブログで繰り返し紹介したことで、運営を始めたばかりにも関わらず注目されたのだった。

 

沼田は「イケてるメディア」「まだまだ伸びる」と褒めちぎりながら、小山くんたちに

「みなさん早く会社を辞めて、就職も辞めて起業しなさい!二足のわらじを履こうなんて甘いんですよ。専業になると飛躍します!」

とけしかけていた。

 

私は次第に沼田を冷めた目で見始めていたので、小山くんを心配し、

「沼田さんはああ言っているけど、どう考えているの?」

と直接聞いてみたところ、

収益と言っても、僕らは4人で運営しているんですから、頭数で割ると大したことないですよ。

アドセンスと記事広告の報酬で、月に2〜4万円ですかね。ランチ代にはなるので、4人で県内の飲食店を食べ歩いて、それを又記事にして、収支はトントンです。

こんなものが仕事になるわけないじゃないですか。(笑)

 

僕らは誰もそんなこと考えてないし、沼田さんの言うことは本気で聞いてないです。

だいたい、僕らは全員に本業がありますから。僕は学生で、他の3人もちゃんと食っていける仕事があるからブログで遊べるんですよ。

沼田さんからどんなに煽られても、無謀なことをするつもりは毛頭ありません。

 

まぁ、メディア運営は、それがどんなものだか一度やってみたかったですし、やってみたことで人脈が増えたので満足です。

その人脈を足がかりに経験を積んで、おかげさまでいくつかの会社から内定を頂けそうです

と笑って答えた。

拍子抜けするほどしっかりしている。

小山くんには逃げたい現実なんて無いのだ。

 

あのころは沼田に影響を受け、せっかく入った大学や安定した給料をもらえる会社を辞めたり、就職を蹴る若者たちが続出して、心ある大人たちの眉をひそめさせていた。

小山くんと同じ大学に通っていた野田くんもその一人だ。公務員として就職が決まっていたにも関わらず、沼田と関わり、「超優秀な若者」と煽てられたことで人生の歯車が狂っていた。

 

どちらも同じ大学に通い、同時期に沼田の取り巻きであったのに、小山くんと野田くんは面識がないという。小山くんが意識的に野田くんを避けていたのかもしれない。

野田さんですか?あぁ、学内で見かけたことはありますよ。

野田さんは、まあ…、ウェイな人ですよね。人を集めて、騒ぐのが好きなんでしょうね。

でも、彼は人を集める以外に何かができる人ではないです。

NPOの代表と言っても、彼が立ち上げたわけではないんですよ。まぁ、そのへん、僕は裏も知っているので…

と、そこで小山くんは言葉を濁した。どこまでもそつがない彼は、決して他人を悪し様に言わないし、無責任な噂を流布しない。大人の信用を勝ち取るはずである。

 

その後、長かった髪を切ってこざっぱりした小山くんは、本格的な就活モードに入り、運営者の一人に名を連ねていたWebメディアからの卒業を発表した。

それにともない、彼が顔と名前を出していた雑記記事は速やかに削除され、Twitterのアカウントも消えた。

彼は野田くんのような悪目立ちかたをしていなかったので、消えたことがネットで話題になることもなかった。まるで小山くんが沼田と関わったことなど無かったかのようだ。

 

そして、最終的に彼は複数のベンチャー企業から出ていた内定を辞退し、一部上場企業に就職した。

ベンチャーも面白そうでしたけど、やはり大手は給与水準が高くて福利厚生が手厚いですし、小さな会社ではできそうにない大きな仕事の経験もさせてもらえそうでしたので、そちらに行くことにしました。

ただ、その会社に骨を埋めるつもりはないんです。僕は自分の地元が大好きなので、30代のうちに◯◯県に帰るつもりです。

そして起業して、地元に貢献したいんです

就職祝いにと私がご馳走した割烹料理に舌鼓をうちながら将来に向けた計画を語る小山くんに、私の方はすっかり舌を巻いていた。

 

一人暮らしの部屋と学生生活に別れを告げて、意気揚々と東京へと旅立った彼は、仕事で大変な思いもしているようだけれど、恵まれた環境で充実したサラリーマン生活を送っているらしいとFacebookの投稿から窺い知れる。

27歳の若さで結婚を決意できたのも、生活に余裕があるからだろう。

 

あのころ沼田の取り巻きたちの中で、ここまで賢く器用な若者は例外的な存在であったように思うが、どうなのだろう。

インフルエンサーに利用される者ばかりが目立つため、小山くんのようにインフルエンサーを利用する者が目立たなかっただけで、実は他にも居たのだろうか。

 

小山くんの結婚報告と公私に渡る充実ぶりを目の当たりにして、久しぶりに野田くんは何をしているのだろうと気になった。

私が最後に彼を見かけたのは、幾度も募集を繰り返してきたクラウドファンディングで遂に資金を集められなくなり、ネット民の嘲笑を買っている姿だ。7年前の彼はクラファンで大金を集めていたが、今では支援者たちにも見限られ、相手にされなくなりつつあるのだろう。

 

久しぶりに名前を検索してみたら、彼なりに踏ん張って、どうにか生きているようなので安堵した。

プロフィールに書かれた10個近くもある肩書きからは迷走感が拭えないが、活動は続けているらしい。

 

大口を叩いて「新卒起業家」を名乗り、何かに手を出しては長続きせずに失敗を重ねる。新卒起業から7年経ってなお迷走中なのは、「野田さんは人を集める意外に何かができる人ではない」という小山くんの人物評が当たっているからなのだろう。

彼は今更引き返せないだろうけれど、都市部の生活をけなしながら限界集落で細々と生きていくことが、彼が本当に就職を蹴ってまでやりたいことだったのだろうか。

 

野田くんを見ていると、エベレストで滑落死した栗城史多さんを思い出す。「単独・無酸素」という触れ込みで、自らが山に登る様子を動画配信し、人気を呼んだ登山家だ。

 

彼に人気が出始めた頃に、私も「単独・無酸素登山」のドキュメンタリーを見て感心した覚えがあるが、その後の彼がエベレスト登頂失敗を繰り返し、バッシングされるようになっていたことについては、彼の死後に出版されたノンフィクション「デス・ゾーン」を読むまで知らなかった。

 

栗城さんの人生は、お調子者で目立ちたがり屋の若者が、実力と経験もないのにネットで注目を集めてしまったことで、闇と秘密を抱えて後戻りできない道へと突き進むしかなくなる悲劇だった。

ネットで博した人気は驚くべき儚さで消えていくのが常である。巧みなパフォーマンスで多くの人から活動資金を集めた分、実力が伴わず失敗するたびに支援者たちからの熱い応援は苛烈な非難へと変わる。

栗城さんもエベレスト登頂に失敗するたび、クラウドファンディングやスポンサーから支援を集められなくなっていった。

 

栗城さんは本当は山が好きではなかったようだ。しかし引き返すことができなくなり、登れないと分かっているエベレストに挑戦し続け、遂には追い詰められて命を落とす。

小さい頃から何かを達成したことのない人間がネットで社会的承認を得ると、いとも簡単にネットの魔力に絡めとられてしまうのだ。

私が7年前に知り合った二人の若者たちの現在の姿には、多くの教訓が含まれているように思う。

 


 

【著者】マダムユキ

ネットウォッチャー。

最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。

リンク:http://flat9.blog.jp/


 

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