美味しそうに見える食品サンプルと、本物のごちそうの違いについて 〜Sa-Rah〜

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あの日もかなりの暑さだった。

 

真夏の高知は陽射しが痛い。日中は極力外に出たくないけれど、「初めて高知に来た」という遠方からの客人には、やはり街頭市として日本一の長さを誇る日曜市を案内しないわけにいかない。

私は大阪からセミナー講師として招いた中村先生に日曜市を案内しながら、名物の一つである冷やしあめを勧めた。

冷やしあめとは、麦芽水飴をお湯に溶き、そこへ生姜の絞り汁を加えて冷やした冷たい飲み物で、夏の滋養飲料として丁度いい。

私たちは紙コップに入れられた冷やしあめと氷で喉を潤しながら、端から端まで市場を歩いた。

 

お土産を購入し、手持ちの荷物が増えた先生は飲み終えた紙コップが邪魔になったのだろう。

「これってここに捨てちゃってもいいよね〜。えいっ。捨てちゃえっ」

と言いながら、近くにあった居酒屋の店先に置かれたゴミバケツの中に、勢いよく紙コップを投げ入れた。

それはお店の業務用のゴミバケツだ。街を歩く人の為に置かれているものではなく、勝手にゴミを放り込んでいい訳がない。それは彼女も分かっているのか、悪戯をする子供のような眼で私を見て、

「ふふふ」

と笑った。

この小さな出来事に、私は彼女の人間性を見た思いがして心がざらりとした。こんな人が「素敵なカリスマ主婦ハンドメイド作家」としてもてはやされているのである。

 

中村先生は、肌に優しい天然素材で大人かわいい服を製作販売するベテランのハンドメイド作家であり、同時に全国各地で「売れっ子ハンドメイド作家になるセミナー」を開催する講師でもあった。

彼女の作るリネンのスカートやワンピースは大変な人気で、お客様の8割がリピーターになるという。

精力的に働く一方で主婦業も手抜きをせず、家族も彼女の仕事を理解し、応援しているそうだ。

中村 亜美はハンドメイドを仕事にしたいと考える主婦たちの理想を体現していた。

 

しかし、そうしたイメージには実態が伴っておらず、彼女の巧みな自己演出によって作られたものだと分かったのは、招致したセミナーが終わって数ヶ月経った後だった。

実際に顔を合わせた当初から、50代にも関わらず語尾を伸ばす幼稚な喋り方や、尊大で自分勝手な態度に違和感を覚えていたが、彼女の本当の活動実績はタレコミによって知ることとなった。

 

Twitter経由で私にコンタクトを取ってきたHさんは、中村 亜美とはかつてママ友で、ハンドメイド仲間でもあったという。

彼女の話によれば、中村は独学で裁縫技術を身につけたとあるが、要するに自己流であり、縫製のスキルは低く、使う素材も質が悪い。なのにプライドだけはやたら高いので、地元のハンドメイド仲間や委託先の店舗と揉め事を起こし、コミュニティから追放されたので仕方なく活動の場をネットに移したということだった。

 

ネット販売にはブログを活用していたが、そのブログの内容が問題だとHさんは憤った。

中村は仲間外れにされたことがよほど悔しかったのか、自分はカリスマ作家であるが故に嫉妬を集め、足を引っ張られたのだと事実と違うことを書き綴り、地元の作家仲間や委託先の店舗を悪者に仕立てていた。

 

「自己プロデュース力の高さは認めますが、服飾作家としての彼女の人気や実績は自称に過ぎず、実際には高い評価を得ていません。どうしてあんな人を信じて、持ち上げたのですか?」

と、Hさんから疑問をぶつけられた私は、

「お恥ずかしい限りですが、私も彼女の自己プロデュースの巧みさに引っかかった一人なのです」

としか返事のしようがなかった。

 

私が自称カリスマ作家の中村 亜美を見つけたのは、Facebookのハンドメイドグループの中だ。

何万人ものハンドメイド愛好家が集うグループ内で、中村はたびたび尖った意見を投稿しては数多くの「いいね!」を集めており、目立っていた。

ちょうど主婦の間でハンドメイド作品の製作と販売がブームになりつつある頃で、テレビでも「ハンドメイドで稼ぐ方法」や「ハンドメイドで稼いでいる人気作家」が頻繁に特集されていた。

元々は趣味として始めても、手軽に作ったものを気軽に売れるのであれば、自分も作った作品を売って稼ぎたい。これで稼いでいけるのなら、勤めに出ずに手作り品の販売を仕事にしたいと欲が出るのは自然なことだ。

 

しかし、同じ考えの人が増えるほどに競争は激化し、作品作りに個性や信念を持たないにわか作家は埋もれ、思うように売れないと悩むようになる。

中村はそうした悩みにつけ込んで、カリスマ作家を自称し、高額なセミナーやコンサルを販売するようになったのだ。

「テレビで紹介していたハンドメイド売買サイトで作品を売っても、安売り合戦に巻き込まれて消耗するだけです。

私はそんなことを一切していません。ブログとFacebookを活用するだけで作品は適正価格で売れていき、しかもお客様の8割はリピーターになっています。

私は皆さんの力になりたい。皆さんも私の真似をすれば売れっ子作家になれます!」

もの作りの知識も技術もなければ数字にも弱い素人作家であるほど、そう力強く言い切る中村の言葉は響いた。私もその一人だったからこそ飛びついたのだ。

商売や起業に、万人に当てはまる成功の法則なんて無い。成功への道は、自分自身で試行錯誤を重ねながら手探りで進んでいくしかないのに、先を行く誰かに近道を教えてもらえると錯覚してしまった。

 

中村のセミナーを招致する為には十人以上の受講者を集めなければならない。

私は知り合いのハンドメイド作家一人一人に営業をかけ、苦労して頭数を揃えて、やっとのことで招致したが、蓋を開けてみればコレジャナイ感が半端ないガッカリセミナーだった。

 

彼女の「売れっ子ハンドメイド作家になる為の秘密のメソッド」とは、

・Facebookを公開して数千人に友達申請をし、アメブロでもフォローバックを目的に数千人をフォローして、自分を認識してもらう。

・ブログでは実名顔出しをして、毎日3記事を投稿。Facebookでは自撮りを含めて1日に5回投稿し、自分の顔と名前をアピールする。

・セミナーやお茶会には積極的に参加し、そこでも自分を売り込む

というものだった。

つまり、売るのは作品ではなく自分なのだ。

 

「ハンドメイド作家なんて掃いて捨てるほど居るのだから、その中で自分の作ったものを高値で売るには、自分自身のファンになってもらうしかない。お客さんを自分のファンにしてしまえば、何をどんな値段で売ろうと繰り返し買ってくれるし、面倒臭い文句も言ってこない」

という考え方には確かに一理あるのだが、

「自分の世界観を表現した、質の良い作品を販売したい。作品の価値で勝負したい」

と考えている良心的な作家が知りたいのはそれじゃない。

 

それによくよく話を聞くと、ひどくコストがかかるやり方だった。

憧れを掻き立てる存在になるためには、まず体裁を整えなければならない。

 

Facebookやブログのプロフィール写真はプロに撮ってもらい、ブログのデザインもプロに頼む。

自撮りを載せるためにはファッションコンサルやメイクアップコンサルにも相談し、お金をかけて自分を作り込む。

自撮りや作品のブツ撮りも講習を受け、商品が売れるブログの書き方もセミナーで習う。

 

彼女が積極的に参加せよという、それらキラキラ起業系のセミナーはどれも高額で、高級ホテルでアフタヌーンティーを頂くお茶会もバカにならない料金だった。

そんな風に初期投資に何十万円、場合によっては何百万もかけてしまったら、数千円のハンドメイド雑貨を販売して回収するには一体何年かかるのか。

中村は、それらを「将来を見据えた投資」だと言っていたが、本人に高い給料をもらえる本業があるか、高収入の夫が居てお小遣いが多い主婦でもなければこんなことはしていられない。中村自身は裕福な家庭の主婦だった。

 

ハンドメイド作家ではなくキラキラ起業家だった中村は、その後もセルフプロデュース力の高さで人気を集めて書籍を出版し、セミナーやコンサルは更に高額化していった。

私は、もはや詐欺師も顔負けの中村を信じてしまった自らの過ちを悔い、ブログで彼女の看板の偽りを暴いて批判を始めたが、意外なことに私の考えは必ずしも繋がりのあるハンドメイド作家やセミナー受講者たちに支持されなかった。

 

もちろん「よくぞ言ってくれた!あんなのはおかしいと思っていた!」という声の方が多かったのだが、一部には「作品のクオリティなんてぶっちゃけどうでもいい。もの作りの専門知識や専門技術を磨くよりも自分を磨いて、私も中村のようにセルフブランディングで稼ぎたい」と考える人たちも少なからず居たのである。

中村のメソッドには、あれはあれで一定の需要があったのだ。ハンドメイドもブームだったが、並行してキラキラ起業もブームだった。

 

中身がないのに見た目ばかりを作り込んで、うわべに騙される人間に価値のない商品を売りつけるキラキラ起業のセミナーやコンサルビジネスは、私の目にはバカが自分よりもバカを食い物にするゲームにしか見えなかったが、バカの裾野は私の想像以上に広かったということか。

中村の劣化版コピーになっていく知り合いたちの活動を悲しく眺めながら、私は奇妙な敗北感を味わっていた。

 

あれから5年以上の月日が経って、私は一冊の本に出会った。

簡素な装丁の薄い本は、自費出版の同人誌にしか見えなかったが、本のタイトルである「Sa-Rah」というブランド名に見覚えがあり手に取った。

Sa-Rahは、リネンを中心に天然素材を使った服を販売している、全国にファンを抱えるハンドメイド界の人気ブランドだ。

 

ページをめくると、そこにはブランドオーナーである帽子 千秋さんの半生と、20年の間、いかにして彼女が洋服作りに取り組み、どのようにSa-Rahというブランドを育ててきたのかが、素朴な言葉で綴られていた。

元々は自分の子供達のために作り始めた手作り服が、やがて近所の人やママ友から求められるようになり、ホームページを作ってネット販売をはじめ、やがてはリアル店舗と工房を持つに至る。

 

服への愛情、仕事に対する責任、何より関わる人との信頼関係を大切にしてきた帽子さんには、確固たる信念がある。

だからこそ、決してお金を追い求めない帽子さんが作ったお店は、交通量の少ない辺鄙な田舎町にあるにもかかわらず、遠方からもブランドのファンが訪ねてきて成功しているのだ。

読み進めながら、私が中村 亜美のセミナーに期待していたのはこういう話だったと気がついた。

 

私はすでにハンドメイド界からは距離を置き、考え方や生き方の違う人たちのやり方に余計な口を挟むこともなくなった。

しかし、ハンドメイド作家でありながらセルフブランディングで自分を売ることを選んだ女性たちの活動を見ていると、ほぼ例外なく活動の途中から占いに傾倒し始める。

 

彼女たちは帽子さんと違って、活動の軸に信念がないのだ。だから孤独に耐えられず、似た者同士でつるみ、迷いが生じる度に占いを頼る。

それは、物作りにプライドと愛情を持つ作家には見られない傾向なのである。

 


 

【著者】マダムユキ

ネットウォッチャー。

最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。

リンク:http://flat9.blog.jp/


 

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