「人生つまらない」と思ったら 精神論じゃなく経験で人生を広げた話

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つらい。


詰んだ。


疲れた。


つまらない……。


そんな気持ちを言葉に変えて、スマホに打ち込んだあなたに。


よくぞ気づきました。よかった。いろんな記事が出るでしょう。いろんな人が書いてます。


なぜなら「人生つまらない」っていうのは、実はめちゃくちゃ多くの人が検索するキーワードだからです。


そのぶん記事を読んでもらえる可能性も高いので、みんなが書きたがります。
わたしも……フリーランスで文筆業を営む32歳のわたしも、その一人です。


説教、精神論、セミナー勧誘、そういうので導いてもらいたい人もいると思います。
努力!根性!頑張ろう!って。


けれどわたしは、「つまらないときに頑張りたくない」人でした。
「なんかおもしろいことが降ってくればいい」と思ってました。
「わたしを無理に変えようとしないでよ。あーあ、つまんない人生、変えなくっても変わればいいのに。魔法みたいに」って。


だからこれからお話しするのは、「つまらない人生を変える方法」ではないです。
わたしはあなたを無理に変えようとしません。ただ、経験を話そうと思います。


毎日が単調で、人生がつまらない、そんなふうに感じている自分が生きている世界の、その、ものすごい広さを感じた話を。
ああ、こういう毎日の繰り返しで、こういう未来に向かってるなぁ……、って、人生「見えちゃった」気がしていても、「見えてない」ものがまだまだあった話を。

小さな世界の人生ドライブ

ルーマニア、フィリピン、レバノン、マレーシア。


ドイツ、フランス、ガーナ、ニッポン。


これだけの国を一回りするのは大変ですが、これだけの国の人と一回りできる街があります。
ロサンゼルスです。


人口の約40%がアメリカ国外生まれ、約20%がアメリカ国籍を持たないというこの移民の街は、まさに「小さな世界」。(参考:World Population Review http://worldpopulationreview.com/us-cities/los-angeles-population/)


日本人街・リトルトーキョー、チャイナタウンに、コリアタウン、リトルアルメニア、リトルエチオピア、いろんな国々をキュッと一つの街に詰め込んだようになっています。

そんなロサンゼルスへ、2014年、旅に出かけることにしました。
わたしは1987年、神奈川の米軍基地近くに生まれました。


英語を話せないせいで笑われる経験をして、勉強が嫌になり、2006年に19歳でフリーターになりました。
大好きなバイト先に出会い、そこで頑張っていましたが、英語での接客ができず、「高卒は正社員になれない」と言われてしまいました。


なので20歳で大学入学、学費を払いきれず除籍になってしまいましたが、なんとか、英会話力と、「それでも生きてやる」という思いを胸に、27歳でアメリカに向かったのでした。


バスや地下鉄もありますが、アメリカはやはり、車社会。
配車アプリの「Uber(ウーバー)」を使い、近くにいるドライバーさんを呼んで移動します。


すると毎回、違う国から来た人に会うことができました。

会話の始め方

運転中なので、あまり会話したくないドライバーさんもいます。
けれど話し好きのドライバーさんもいて、そういう人はUberアプリ上で「おもしろ運転手(Entertaining Driver)」「会話上手(Great Conversation)」のバッジを持っていたりします。


バッジと空気をうかがいつつ、話しかけても良さそうな雰囲気のドライバーさんには、せっかくなので話を聞くことにします。


会話の始め方はこうです。


「日本から来ています。慣れないところなので運転ありがたいです。あなたはロサンゼルス生まれですか?」


そこから大体「うん、ロサンゼルス生まれだよ」「いや、〇〇から来たよ」と会話が膨らんでいきます。
街のことを教えてくれる人もいれば、生まれた国を出てどうしてアメリカを夢見てきたのか話してくれる人もいて、


「アメリカ人に恋をしちゃった!」
「アメリカのコメディアンが大好きなの!」
「アメリカでジムトレーナーやってビッグに稼ごうと思って!」


それぞれがそれぞれのアメリカンドリームを語りながら、ハイウェイでアクセルを踏みこむのでした。

けれどその人、ファルシデさん(仮名)は違いました。

夢見てくる人、追われてくる人

「イランから来たんだ」


深く、低く、落ち着いた声で、ファルシデさんは言いました。
太い眉毛と長いまつ毛と、砂漠みたいな静けさと。


ロサンゼルスのUberドライバーさんは多くがカジュアルなTシャツですが、ファルシデさんは、ビジネスライクな白いシャツ。言葉を短く切るように、ぽつり、ぽつりと話します。


「なぜアメリカに?」


ロサンゼルスの六月は快晴。梅雨もなく、カラッとして、コカコーラのCMみたいな青空です。
外では、UCLAの学生風の人たちが、ジーンズにスニーカーで楽しそうに騒いでいます。
そんな中を運転しながら、


「僕は故郷から逃げた」


ファルシデさんは言いました。まっすぐ前を見たままで。

ウエストウッドのばらの花

「安心してほしい。僕は犯罪者でもテロリストでもない」


逃げた、と言ってからすぐに、そう付け加えたファルシデさん。
言い慣れたような、言い飽きたような、そんな、平らな言い方でした。


思い出しました。
9.11、2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、日本にも、アメリカにも、中東出身の人たちみんなを敵視するような無理解があったことを。


浅黒くてすぐ怒るからと、子どもたちから「アルカイダ」とあだ名をつけられていた先生。
工事現場で働くイラン人たちが、「職質のしかたが失礼な警官のモノマネ」対決を日本語でやっていた時の笑い方。
カナダ、フランス、ニュージーランド、相次ぐモスクへの放火。
アメリカ入国手続きのための質問表にあった、「イランへの渡航歴があるか?」という項目……。


「ごめんなさい」


とっさに謝ってしまいました。謝ってしまったことが、空気を余計に重くしました。
自分は何を謝ったんだろう? 必死になって言葉を継ぎます。


「なんというか……あなたがロサンゼルス出身かどうか聞いたのは、深い意味はなくて、単なるおしゃべりのつもりだったの。あなたのことテロリストだなんて思ってないし、人の出身地を聞いただけでテロリスト扱いする人は恐れに囚われているのだと私は思う」


「そういうふうに言ってくれるなら、聞いてくれるかい、僕のおしゃべり」


車はUCLAの学生街を抜け、ウエストウッド通りに差しかかっていました。

故郷に家族を残して

「僕の家族はバハーイー教徒だった」


「バハ……?」


「バハーイー。B・a・h・a・i」


わたしが知らないその単語を、ファルシデさんは、一文字ずつ発音してくれます。


「イラン出身だけど、スンニ派でもシーア派でもない。というか、スンニでもシーアでも、人間がどんな場所から、どんな言語で、どんな人のもとで、どんな名前をつけて“それ”を呼ぼうとも、“それ”は、本当は一つなんだ。そう信じている」


「“それ”って、つまり、神様のこと?」


「君が“それ”を“神様”と呼ぶなら」


これ、宗教勧誘はじまるやつかな?


話の続きを待ちました。
少しの警戒心と、「いやいや、宗教だからってすぐ警戒するのも偏見でしょ」という自分ツッコミとのはざまで。


「ところが……僕たち家族がそう信じているということを、そうは信じない人たちに知られてしまった。まず、僕の叔父が宗教裁判にかけられた。叔父は口を割らなかったが、家族全体へ芋づる式に危険が迫っているのは明らかだった。


逃げろ。そう言われた。
逃げる。そう決めた。
決めたのは僕だ。僕は、一人で逃げた」


“それ”は、本当は一つなんだ
さっきファルシデさんが言ったことが、また、新たな意味を帯びて思い出されます。


「たどり着いたのがここ、ロサンゼルスだったんだ。ここにはイラン人街があるからね。イラン人コミュニティから紹介された仕事や、このUberの仕事で、僕はなんとか食いつないできた。英語も必死で覚えた」


じゃあ、もう、故郷には帰れないの? 家族には会えないの?


そんな質問が浮かびました。言えませんでした。
ただ、さっきの一言が、いろんな意味を持って繰り返し浮かんでは沈みました。


“それ”は、本当は一つなんだ……。

それでも故郷は美しい

「帰りたくなったらね、僕はいつもYouTubeでイランの街並みを見るんだ」


そう言ったファルシデさんは、わたしが言えなかった質問を察したようでした。
もしかしたら他の人にもこの話をして、言われ慣れていたのかもしれません。
「帰りたくないの?」「家族は大丈夫だったの?」って。


「美しいところだよ。君にもいつか行って欲しい」


目的地に着き、ファルシデさんは車を停めました。
けれど話は止めないで、こちらのほうを振り向きます。


追われ、流れて、もうYouTube越しに見ることしかできなくなった故郷に、「行って欲しい」という気持ち。この人は、そこで生まれて、帰れない。じゃあ、自分は……?


「素敵だろうけど、女性の一人旅は危ないかな?」


「ただ、髪を隠せばいいだけだ。テヘランは初心者には勧めないけど、イスファハーンを見てほしい。イランは危険だとか、メディアでかきたてられるけど、あれはね、画面のあちら側に危険をうつせば、画面のこちら側が安全だと思えるからだよ。その安心感が欲しくてみんな、画面越しに異国を攻撃するんだ。冷房の効いた部屋からね。だけれど風はいつも、外に吹いているんだ」


車のドアを開けます。
風が流れ込んできました。


“イスファハーン”。


聞いたことあるようなないような、その街の名前は、風の音に似ていました。

外の世界が必ずあるから

旅行中に乗った車を運転してくれた、ただそれだけの縁だったファルシデさんに、もう会うことはないでしょう。
日本からイランへの航空券は格安でも十数万円。ペルシャ語もしゃべれません。


けれど……「ウエストウッド通り」という、中東感ゼロの名前を持つその通りが、実は中東系移民の集まる通りだと教えてもらい、何か中東の食べ物を探してみようと思いました。


ロサンゼルス在住の日本人と合流して、ペルシャアイスクリーム屋さんに入り、「ファールーデ」というペルシャデザートを注文しました。

つめた〜いパリパリ麺と、シャリシャリの薔薇シャーベット。
なんだか日本のかき氷に似てるような、似てないような。イランの夏は、どんななんだろう?


食べたことのないもの。
まだ知らない街。
画面のこちら側からでは一部しか見えない、あちら側。


「人生つまらない」と思うのは、だいたい、閉じ込められてる時なんです。
先が見えちゃった気がしてて、「どうせ〇〇でしょ」「また〇〇だ」と思ってて、なんだか繰り返しの気がしてて。


そういう時は、思い出そう、と思うのです。必ず、“外”があるってことを。
「人生つまらない」ときって、出たくなります。
「会社を/学校をやめたら変わるかな」とか、「海外に出たら変わるかな」とか。
それもいいかもしれないですけど、それだと、「出られないからつまらない」って思っちゃうでしょ。


出られなくても、窓を開けます。
ああ、つまんないなって思いながらコンビニのカップアイスを食べてる自分と、おんなじ星の上で今、イランの人がつめたいファールーデをシャリシャリ食べてるのかもしれないな、って。
“そこ”から“ここ”へ、知らないとこから知ってるとこへ、風はいつも、ひとつづきに吹いてるんだな、って。


牧村朝子(まきむら・あさこ)
文筆家。1987年神奈川県生まれ。著書「百合のリアル」「ハッピーエンドに殺されない」他。
メディア出演「NHKハートネットTV」「5時に夢中!」他。twitter:https://twitter.com/makimuuuuuu


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