精力剤を通販で購入したら逮捕された男 その違法性と意外な裁判の勝敗

 

今回の裁判では、出世欲に目がくらんだ麻薬取締官の証言が非常に印象的でした。

この裁判に至る捜査で、彼は絶対にやってはいけないミスをいくつも犯してしまい、その結果、検察は70歳の無実の市民を起訴してしまうのです。

さらにとんでもない名言まで飛び出すなど、最後まで目を離せない展開になりました。

 

精力剤をネットで買ったらマトリがやってきた

この事件は、70歳の男性が精力剤を購入するところから始まります。

「これしか効かないんだ」と被告が語る精力剤は、当初は日本でも売っていたのですが、徐々に手に入らなくなったとのことでした。

そこで被告は怪しいネット通販サイト「ハロー媚薬」という所で精力剤を購入します。

するとなんと、突然マトリがやってきて逮捕されてしまったのです。

 

「最近、中国から何か輸入しましたよね?」

「ああ、精力剤なら買いましたよ、そこです。」

それこそが、この裁判のきっかけとなった精力剤「イカ王」でした。

 

イカ王!なんてイカしたネーミングの精力剤でしょうか。イカにも効きそうです。

被告は当初、日本の薬局でイカ王を購入していたのですが、徐々に販売する店が少なくなり、入手が難しくなったそうです。

しかし、すでに自力での勃起が難しくなっていた被告には、愛する妻との性生活のためにどうしてもイカ王が必要でした。

そこで発見したのが、「ハロー媚薬」というサイトだったのです。

 

被告はここからネットショッピングし、媚薬が届くのをウキウキしながら待ちました。

しかし、待てども待てども商品が届きません。

おかしいと思い調べてみたら、なんと通関で引っかかってしまい、ストップしていたのです。

激怒した被告は通関に電話し、激しいクレームを入れるのですが、するとどういう加減であったのか、すぐに配達されてしまいました。

そしてこれが、後に逮捕される伏線になるのです。

 

実はイカ王には、問題がありました。日本ではすでに違法になった成分が含まれていたのです。

それを知らずに輸入し、さらに通関にまで「圧力」をかけてしまった被告は確信的に犯罪に手を染めているとみなされ、麻薬取締局に連絡が行き逮捕となったのです。

 

被告は当然、裁判で無罪を主張しました。

彼は何も知らずに、これまで通りイカ王がイカしてると思っていたので買っただけだったのです。

裁判では冒頭から、検察側の証人と弁護人の論戦が交わされることになりました。

そしてこの時の証人こそ、今回の主役である麻薬取締官(マトリ)です。

彼は薬学部を卒業後マトリに入り、各地を転々としていた強面の男性です。

被告を逮捕し、3日間ネッチリと調べ上げた張本人でもあります。

 

最初に口火を切ったのは弁護人でした。

「なぜ、被告が危険ドラッグを輸入している思ったのですか?」

「被告が利用していたサイトはピンク色で怪しいものでした。怪しいサイトから買うってことは、怪しいものだと本人もわかっていたはずです。」

正直、耳を疑いました。

この麻取、理屈も凄いですが弁護人の質問に対する答えとして明らかにずれています。

もはや、ワクワクしかありません。

 

「イカ王は通関するのですか、しないのですか?」

「違法成分が含まれているので通関しません」

「それが被告、すなわち素人にわかることだと思いますか?」

「わかりません。でも一度通関しなかったので、怪しいものだとわかったはずです!」

 

明らかに論理の飛躍があります。

この辺りから、麻取のキャラクターが明らかになってきたので、裁判官の質問もだんだんイラついたものになってきました。

 

「だ・か・ら!被告が自ら自白したのはいつなの?」

「怪しいと思ったでしょ?と聞いて、はいと答えたので自白しました!」

「じゃあ、自ら自白したのではないんですね!そうですね!」

「・・・・はい」

 

裁判官によるねっちりとした締め上げです。

ミスができない仕事というのは、このように慎重に慎重を重ねて進めるべきでしょう。

裁判官もマトリも大変な仕事です。

 

裁判官はどんな小さいことでも見逃さず、きっちり確認を取っていきます。

このままでは無罪になるのは確実でしょう。

見かねた検事が再質問をしますが、被告がイカ王を危険ドラッグと認識していたとは、どのような質問でも掘り下げることはできませんでした。

 

0.1%の無罪

刑事裁判では、有罪の確率は99.9%。

しかし、結局この裁判では1000人に1人という無罪になりました。

 

被告の心労を思うと頭が下がります。

それもこれも、証人であるマトリに目をつけられたからです。

被告は無罪を勝ち取りましたが、結局、妻とは離婚されてしまいました。

かわいそうとしか言いようがありません。

有罪にならなかっただけ、良かったと言うことでしょうか。

 

70歳の被告にとって、ムキムキでおっかないマトリの取り調べは怖ろしかったはずです。

やってもいないことを自白してしまう気持ちもわかります。

 

もし、裁判官が証人のミスを見逃していたら、結果は違ったものになったでしょう。

検事は頭を抱えていました。

彼にとっては1000件に1つのミスです。

出世に響いてしまうのかもしれません。

サラリーマンにとって出世とはとても大事なものです。

ですが、それに目がくらんでしまうと、とんでもないミスに繋がってしまうのだと感じました。

 

結論:出世に目がくらんで大事なものを見落としている

名言が飛び出した裁判でした。

印象に残ったのは何よりも証人です。

出世したいからと言って、強引に被告を有罪だと決めつけました。

 

絶対にミスできない仕事こそ、冷静になるべきでしょう。

傍聴席から見ていても、被告はどこからどう見ても勃起に悩む70代の男にしか見えません。

 

証人はそんな被告を強引に自白させ、起訴にもっていってしまいました。

出世よりも大切な事を見落としていたのです。

それは、成果を上げようと、社会や他人に迷惑をかけてしまったこと。

どんな仕事でも、他人に迷惑をかけてはいけません。

仕事を頑張りすぎると、そんな常識まで見えなくなってしまうのです。

 

どうしても、迷惑をかけなければいけない仕事と感じるのであれば、生き方を変える時なのだと思います。

証人は思い込みが激しいタイプに見えました。

ピンク色だから怪しいって・・・と被告には申し訳ないけど今でも思い出し笑いしてしまいます。

 

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【著者】野澤 知克

自営業(飲食店)を営みながら、ふとしたきっかけで裁判傍聴にハマった傍聴ライター。

現在は専業ライターとして、裁判所に通う毎日。

事件を通して人間の「生き方」と向き合ってます。