
導入
「トミー・フェブラリーって可愛いよな」
友人から、そう問いかけられた僕は何の考えもなしに「確かに可愛いよな」と返した。
実際のところ僕は、トミー・フェブラリーをそれほどかわいいと思っていなかった。
ただあえて否定するのもめんどうだったので、友人にあわせただけである。
僕の隣に座っていた彼女は、その会話を笑って聞いていた。いつもの笑顔だった。
それは本当になんてことのない、ちょっとしたやり取りのはずだった。
そんな些細なやり取りを今でも覚えているのは、それなりの理由がある。
大学時代につきあっていた彼女
トミー・フェブラリー。
これは「There will be love there -愛のある場所-」「愛の♥愛の星」などのヒット曲で知られるバンドthe brilliant greenのボーカルである川瀬智子が、ソロ活動を行う際に使っていた名前である。
僕が大学生だった十数年前、トミー・フェブラリーは多くのヒット曲を生み出していた。
伊達メガネをかけてPVの中で「ジュテーム♪ジュテーム♪」と歌い踊るトミー・フェブラリーはとてもオシャレで可愛らしかった。
そのため、僕の周囲にも支持者は多かったというわけである。
ところで以前、別のところでも書いたことなのだが、僕は大学生だった4年の間、同じ彼女と付き合っていた。
紆余曲折あって別れたのだが、何の因果か社会人になってから、その元彼女と2人で食事に行く機会があった。
関係性にもよると思うが、僕は別れた後にかつての恋人と2人で会うことをあまりおススメしない。
何故なら、ろくなことにならないからだ。
振られた理由を丁寧にフィードバックされた
当たり前のことだが大学生だった僕はあらゆる意味で若かった。
それゆえに多少イキったところがあり、彼女にも亭主関白きどりで接することが多かった。
むしろ、そんな誤った方向の男らしさに酔っていたところすらあるのだから救えない。
久しぶりにあった元彼女は、ここぞとばかりに僕のそうした態度を徹底的に批判した。
ぐうの音もでない正論の数々が僕の胸に突き刺さっていく。
それだけでも十分に致命傷を負った20代の僕を決定的に落ち込ませたのは、元彼女から「結局あなたは自分にしか興味がないのよ!」というシャウトが飛び出した時だった。
元彼女は、自らの主張を具体的なエピソードで補強し、強固なものにしていく。
「私はあなたの友達のことたくさん知ってるけど、あなたは私の友達の情報を全然知らないでしょ?」
「あなたの趣味で一緒にサッカー見に行ったりしたことはあるけど、あなたは私の趣味につきあってくれたことあった?」
「今日だって、自分の話ばかりしてない?」
今こうして思い出して書いているだけでも、強烈に凹むパンチラインばかりである。
20代の自分は、どのようにしてこの痛みを受け止めたのかわからなくなるほどだ。
それでも彼女にとって致命的だったのは僕の軽はずみな言葉だった
敗色はこれ以上ないほどに濃厚だったが、僕はアルコールの力を借りて何とか反論した。
そんなことはない。
自分にしか興味がないなんてことはないし、もちろんつきあっていた頃は君にだって興味はあった。
ただ、僕はあまり器用ではないから、それが伝わらなかっただけなんだ、と。
そんな言い訳をしたと思う。
だが、僕の反論に対し、元彼女はあきれた顔で予想外のセリフを言った。
「フットサルの帰りに京王線の中で●●君とトミーフェブラリーの話したの覚えてる?」
急に話題が変わり意表を突かれたものの、確かに僕はその場面を覚えていた。
だが、それはボロが出ようのない、本当に何気ないやりとりだったはずだ。
あんなわずかなやり取りの中に、元彼女が僕に幻滅する要素があったとは思えない。
なぜ、このタイミングでそんなことを言い出すのだろう。
「うっすらだけど覚えてるよ」。
意図をはかりかねて困惑する僕を憐れむように元彼女は続ける。
「あなたは友達に『トミー・フェブラリーって可愛いよな』って言われて、可愛いねよな!って共感したでしょ」。
確かに共感した。
だが、それはそんなに悪いことではないはずだ。
それだけならば。
元彼女は種明かしをするように、結論を述べる。
その瞳には無抵抗な人間をなぶるような残酷さが宿っているようにも見えた。
「その数日前、私が同じこと聞いたことは覚えてないでしょ?その時は、あなたは『えー微妙』って言ったの。
私は『あぁこの人は、私の言うことには共感しないけど、友達になら共感するんだな』って思った」。
電車の中で交わした、全体で30秒にも満たないであろう、ちょっとしたやりとりが、こんな伏線になっているなんて…。
こんなことは、きっと神様だって気づいていなかっただろう。
もはや返す言葉を失った僕は、作り笑いを浮かべると伝票を手に取りレジに向かった。
『傾聴』と『共感』の欠如は人間関係を破綻させる
次の日から、僕の部屋には「聞く技術」「共感力」といった類の本が山と積みあがることになった。
多くの恋愛ハウツー本が指摘するように「女性の話をキチンと聞くこと」と「共感を示すこと」というのは非常に重要だ。
そのどちらも欠いた時、人間関係は破綻を迎えるのだろう。
きっと元彼女は、このちょっとしたやり取りの中に、「こいつとはわかりあえないわ」という絶望を感じたのだと思う。
それは人として至極当然の反応だし、実際の年齢以上に成熟していなかった自分の不明を恥じるしかない。今は反省している。
幸か不幸か僕は20代前半の頃に、「もうやめてくれ!」と叫びだしたいぐらい丁寧なフィードバックを受けて、このことを学ぶことができた。
だから、多くの人に早い段階で気づいてほしいと願っている。
ちなみに今の僕は、トミー・フェブラリーが好きだ。心の底から可愛いとも思っている。
この記事を書く際にBGMとして聞くほどに。
それは多分、20代の頃の経験とは無関係だ。断言できる自信はないのだけれど。
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著者:永田 正行
大学卒業後、零細出版社に広告営業マンとして勤務。
その後、会報誌の編集者を経てネットメディアの編集記者となり、政治家や大学教授へのインタビューを多数手掛ける。
好きな言葉は「ミラクル元年 奇跡を呼んで」の西武ライオンズファン。
Twitter:https://twitter.com/jake85elwood