離婚を恐れる歳をとったお嬢様と、逃げたくても逃げらない夫〜逃げるは恥だが役に立つ〜

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新春ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を見ていたら、舞台となっているのは友人が住んでいる街であることに気づいた。

友人は一回り以上年上で、名をリュウジという。20年来の友人だ。

なかなかタイミングが合わず、かれこれ5年以上は会っていないが、毎年お正月になると「明けましておめでとう」の年賀LINEをやり取りして、近況を報告し合うゆるい付き合いを続けている。

 

彼からの年始の挨拶には、いつも数枚の写真が添えられている。

以前の彼は年末年始を自宅から離れて過ごしていたので、写真には海外のリゾート地だったり、都内の高級ホテルで妻と共に寛いでいる様子が写されてメールに添付されていたのだが、ここ数年は自宅内の写真がLINEで送られてくる。

 

彼の妻が一人で整えた正月の装飾は、伝統的でありながらも現代的に洗練されて非の打ちどころがなく、彼女が腕によりをかけたおせちとお雑煮は、一昨年よりは去年、去年よりも今年と、年々手の込みようがグレードアップして豪華になっている。

SNSに投稿すれば、おびただしい「いいね」を集めること間違いなしの映える正月料理に感心し、

 

「すごい!美味しそうだね。毎年おせちを手作りするなんて、奥さん本当に偉いよね!」

と、決して大袈裟にはならない賛辞を送るのだが、彼はそれについて反応しないばかりか、

「いつものことながら妻と過ごす正月は試練だ。忍耐が試される」

とぼやきが返ってくる。

 

昔の彼はそんな風ではなかった。

かつてリュウジにとって奥さんは自慢の種で、彼女の美しさも、センスの良さも、臆面なく誇ってやまなかったのだ。 

彼が妻を疎ましがるようになったのは、10年ほど前からだった。

その間、かつての愛妻家ぶりを知る私は、信じられない思いで彼の心が変化していく様子を見つめてきた。

 

リュウジが後の妻となるマドンナと出会ったのは、彼がまだ十代で、都内の大学に通う1年生の時だったそうだ。

彼は学内で輝くばかりに美しい山手のお嬢様と出会い、一目で恋に落ちた。

リュウジの青春〜青年期の日本では、男は肉食で当たり前。

当時の社会的な規範に従い、彼も肉食獣として美しい獲物に猛アタックし続けた結果、見事に高嶺の花を手中に収めたのだ。

 

しかし、試練が待っていた。美しい恋人の虜となったリュウジは、学生生活を終えるなり結婚しようと考えたが、彼女の実家へ挨拶に出向くと、待ち構えていた父親から、

「お前はどこの馬の骨だ?」

と、けんもほろろにあしらわれてしまう。その時の悔しい思いが彼の心を一層燃え上がらせた。

何としてでも彼女と結婚しようと決意し、より良い収入を得るため外資系企業に転職してがむしゃらに働き、20代のうちに1000万円を超える年収と、都心の一等地にマンションを得た。

 

リュウジは20代の全ての時間を費やして義父を見返し、どうにか結婚を許してもらえる最低条件をクリアしたのだ。

女はクリスマスケーキと同じ。

25歳を過ぎて売れ残ると価値がなくなると言われた時代に、29歳まで自分を待ってくれた彼女に、彼は心から感謝していた。

 

求めてやまなかった女性を手に入れた後も、リュウジは生存競争の苛烈な業界で順調に出世を重ね、更にヘッドハントを経て大きく年収を上げ、40代になる頃には人が羨むような社会的地位と生活を手に入れた。

それについても、

「僕がここまでこられたのも、全て妻のおかげ。彼女に見合う男になりたくて努力したのだから」

と語っていた。

のろけを聞いていた頃の私は二人を理想的な夫婦だと思っていたし、夫から愛情もお金もふんだんに与えられている奥さんが羨ましかった。

 

そんな仲睦まじかった夫婦の間に不協和音が生じるようになったのは、二人が50代に差し掛かろうとしていた頃だ。

それまでは、

「僕の妻は孤高の存在なんだ。誰とも交わらない。そういうところを尊敬している」

と言ってたのが、

「彼女は働いていない上、一切友達付き合いをしないから社会が狭い。テレビの話しかしないから会話するのが苦痛だ」

と言うようになり、

「妻は素晴らしく洗練されたセンスの持ち主だから、家の中のインテリアも凝っているんだ」

とかつては嬉しそうだったのが、

「話し相手は百貨店の外商しかいないものだから、買い物ばかりして困る」

と冷たい目を向け始めた。

何よりの自慢だったはずの妻の美貌や若さも、

「近頃は1本5万円もする注射を顔にバカスカ打っている。全く気持ち悪いったらないね」

と、軽蔑を隠さない。

 

ある時期、連日連夜繰り返される夫婦喧嘩にすっかり疲れてしまったリュウジが、愚痴をこぼしに度々連絡をしてきていた。

「50歳になろうという大人の女が、『もっと私をケアして欲しい。あなたは私を幸せにする責任がある。あなたは私がどれだけお父様に大切にされて育てられた娘なのか分かってない』なんて言うんだぜ。冗談じゃないよ」

 

彼の言い分は尤もだ。彼女はもう他人に「もっと私の面倒を見て」と言っていい歳ではない。

精神的に自立し、自分の面倒くらい自分でみた上で、更に若い世代の面倒も見なければならない年齢だ。

それなのに、就労しておらず、子育て経験もない彼女は社会との接点を失い、年齢相応の成熟をしなかった。

未だに若い娘のような気持ちで愛情と庇護を求めるのは、確かに痛すぎる。

 

けれど、彼女を一方的に痛い女と責めるのは酷に思えた。

彼女の世代では、結婚後に仕事を辞めて専業主婦になることは一般的なことだったろうし、彼女が母親になれなかったのは、リュウジが子供を望まなかったからなのだ。

かつてはマドンナと崇め、かしずき、家庭の中で手厚く保護してきた結果、歳とった女の子になってしまった妻が今になって疎ましいとは、無責任ではないだろうか。

伴侶をまるで魅力のない女にしてしまったのは、夫であるリュウジにも責任の一端があるはずだ。

 

かつては夫に対して優位に立っていた彼女が、今になって愛されている実感をしつこく欲してやまないのも、顔にボトックスやヒアルロン酸を打ちまくるのも、40代半ばごろからリュウジの態度が変化してきたせいだろう。

かつては絶対的な魅力と価値であった美貌が衰え、最早夫を引き付けていないことが分かるから、不安と焦りが募るのだ。

しかし、彼女が愛を求めるほどにリュウジは萎え、会話を求めるほどに却って妻を嫌悪するようになった。

家庭が殺伐とするようになって2〜3年が過ぎた頃、妻の止むことがない欲求と要求に音を上げた彼は、遂に離婚を突きつけた。

 

「家も車も、保有している金融資産も現金も、今ある財産は全て差し出すから別れて欲しい」

と申し出たそうだ。

それを聞いた私が、

「ええっ!すごい、最高!全財産もらえる上に面倒な男の世話から開放されて、人生薔薇色じゃん!

お金のためには働かなくていいんだから、私だったらとりあえず趣味の活動なりボランティアでも始めて、すぐさまボーイフレンド3人くらい作って毎日遊ぶわ!奥さん、やったね!」

と感想を漏らすと、

「もし妻が君みたいな考え方ができる女だったら、俺だって別れたいとは思わないよ」

と、溜息をついた。

 

結局、今も二人は別れていない。財産分与は済ませたのだが、奥さんが離婚届に判をつかないのだ。

「全財産渡してもいいから別れたい」とまで言われて、彼女のプライドは修復不能に傷ついているに違いないが、それでも結婚生活にしがみ付くのは、独り身になる恐れの方が勝るためだろう。

主婦という役割と、外資系IT企業重役の妻という肩書きを失えば、彼女は何者でもなくなってしまう。

クレジットの家族カードを失えば、出入りの百貨店外商の態度も変わるだろう。

今の時代、離婚したからといって必ずしも社会的評価はマイナスにならないのだが、世間知らずの彼女にとっては外聞が悪く、いたたまれなくなるのかもしれない。

 

離婚だけは何としても回避したい彼女は、夫の機嫌を取ろうと正月には高級ホテルで過ごしたいと言わなくなり、豪華なおせち料理を手作りするようになった。

けれどリュウジは、妻との結婚生活を我慢していくためだと愛人を作り、夏のバカンスは妻ではない女性と過ごすようになる。

毎年リュウジが送ってくるおせちの写真を見ると、私は少し悲しい気持ちになる。

写真を送ってくるくらいだから、リュウジも美しく盛り付けられた料理の数々に感心はしているのだろうが、失われた愛情は戻る気配がないからだ。

高収入の夫が居て、都会の美しい夜景が一望できるマンションの高層階に住み、他人が羨むような贅沢な暮らしを手に入れているのに、リュウジの妻は空っぽなのだった。

 

彼女は離婚調停が申し立てられることを恐れて、夫に不平不満をぶつけなくなった。

そのため、彼は

「以前より妻が面倒ではなくなったので、耐えられなくはない。ならば、このまま我慢し続けるつもりだ。僕は人一倍忍耐強いからね。男として責任もある」

と言い、今では離婚を諦めた様子である。

 

年賀LINEの返事に、

「ドラマにあなたたちが住んでるとこが映ってたよ」

と話すと、テレビは見ないので逃げ恥も知らないと言う。

見たとしても、男は男らしくあらねばと考えるマッチョな彼が楽しめる内容ではないだろう。

有害な男らしさや性別による役割分担の呪いにかかっていると言われても、これまでの価値観や信念を変えて生き直したり、夫婦関係を一から築き直すのは難しく、今更どうしようもないはずだ。

 

もう少し若かった頃の私は、リュウジたちを不幸な夫婦だと決めつけていただろう。

けれど今は、「まだそうと決まったわけではない」と考えている。

人生は終わってみないと結論が出ない。今は互いに我慢しあって暮らしているのだとしても、これから共に老い、健康も損なわれていく中で、いつか互いへの労りが芽生えないとも限らないではないか。

理由はどうあれ別れないと決めたなら、「辛い時もあったけれど、一緒にいて良かった」と、二人が手を取り合う未来が来ることを期待したい。

 


 

【著者】マダムユキ

ネットウォッチャー。

最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。

リンク:http://flat9.blog.jp/

 

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