ダメ男との結婚・離婚は後悔しか無いわけではない 〜楊梅(やまもも)の熟れる頃〜

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高知では、中年の女たちが集まると、必ず離婚話で盛り上がった。

 

「私は旦那が出かけてる隙にカバン一つで夜逃げしちゃった。猫も家財道具もみんな旦那にやったわ。結婚した時に共同名義で買った家に、今は彼が新しい奥さんと住みゆう」

「私は、若い時にうんと年の離れたおっさんと結婚してしまってよ。も〜う、偉っそうやったわぁ。思い出すだけで腹立つ。耐えれんなって別れて、ほんまサッパリした」

「うちの元旦那のクズ具合は誰にも負けんと思うで。女遊びがひどかってよぉ。自分はブランドもんの腕時計して、金はあるくせに生活費を入れん。それやのに離婚はせんと言うき、裁判までして別れるのが大変やった。

裁判しゆう間は私もボロボロんなって、入院してしもうたで」

「前の旦那は、私が長男を妊娠中にミュージシャンになると言いだして、東京へ行ってしまってがです。家出したまま帰ってこないんで別れました」

「実は私、旦那の束縛と精神的DVにずっと耐えてました。お姑さんとも同居しよったがですけど、それもすごいしんどくて、ストレスで病気になってしまって…。

今は再就職先の仕事が忙しくて大変ですけど、家を出られて本当に嬉しいです」

などなど。皆それぞれにドラマがある。

南国である高知は沖縄に次いで離婚率が高い。だから仕事で知り合った人と話をすると、

 

「あら、あなたもバツイチ?仲間やね〜」

と、離婚が共通点となって話が弾むことも多かったし、何より、子供たちが通う学校でもシングルマザーやシングルファーザーが珍しくなかったので、肩身の狭い思いをすることもなかったことがありがたかった。

学校の先生方も対応に慣れており、高知に帰ってきて本当によかったと思ったものだ。

 

高知県民にとって「根性がある」というのは、

「強い相手や困難な状況にも怯まない度胸がある」

という意味であり、辛抱強いという意味ではない。

豊かな海と山に囲まれた温暖な高知県は自然の恵みが多く、貧乏でも食べることには不自由しない上、真冬でも凍死することなどありえないため、気候の厳しい土地に生まれ育つ人々と違って忍耐が身につかないのだ。

 

昔から土佐の男は気が短いと言われるが、女たちの導火線の短さも負けていない。

貧乏県であるが故にシングルインカムで十分な収入が得られる家庭は少なく、女も結婚や出産をしても働き続けるのが普通であり、職種によっては夫より収入が多かったりする。

そのうえ近くに頼れる親や親族の家があるとなれば、何を我慢する必要があるだろう。甲斐性のない男を叩き出す経験は、むしろ女の勲章である。

 

そうはいっても女一人の世渡りが生やさしい訳はない。子供を抱えていれば尚更だ。

そもそも誰も離婚するつもりで結婚はしていないのだから、思うようにいかない結婚生活に泣かなかった者はないだろうし、離婚にあたって葛藤がなかった者だって居ないのだ。

それでも私が高知で知り合ったバツイチの同志たちは、皆からりと明るかった。

 

「私が『いよいよ無理』と思ったのは、夢を追いかけると言って会社を辞めた旦那が結局転職に失敗して、フリーターになって、毎日発泡酒やストロング缶チューハイで酔っ払うようになったから。特に休みの日なんかは昼間から安酒あおって、ソファにひっくり返って寝ているようになって、ほとんどアル中。

子供たちにも関心も払わなくなった様子を見て、もう父親じゃないと思って、ようやく別れる決心がついた」

と、まだ離婚の傷が癒えていないうち、私は自身の身の上話をしながら涙が滲んでくるのを止められなかった。泣きぼくろのせいなのか、私は元々涙腺が緩いのだ。

離婚そのものも辛かったが、離婚前の3年間の暮らしの苦労で私は疲れ果てており、余計に涙を制御できなくなっていた。

 

けれど、高知の女たちはひどい経験をした者ほどあっけらかんとして陽気であり、

「いやー。旦那さんアル中やったかえ。そりゃあ、いかんねぇ」

と、大笑いしながら聞いてくれ、

「うちの旦那もひどかったでぇ」

と、おどけて話してくれる。

 

そうやって、お互い、いかに元夫がひどい男だったか、どれほど大嫌いになって別れたかでひとしきり盛り上がれば、いつしかお腹を抱えて笑い転げているのだった。

 

高知の鮮やかな空の色と力強い味の新鮮な食べ物、何より苦労を重ねるほどに情が深くなる女たちとの陽気な酒に、私は次第に癒されていくのを感じた。

心身の健康と活力を取り戻し、ささくれていた心もなだらかになってくれば、前の結婚生活も冷静に振り返れるようになる。

離婚を経験した者同士で過去を笑い合う時には、私は相性の悪かった元夫との結婚を「地雷を踏んだ」などと表現していたが、元夫から見れば地雷は私の方なのだった。

 

私たちはお互いにとって地雷だった。なぜなら似た者同士だから。

私と元夫がお互いを不幸にしてしまった理由が自分でもよく分かるようになったのは、離婚して3年ほどの月日が流れた頃だったろうか。

 

その頃になってやっと、そもそも家庭の運営とは組織運営であり、気質も同じなら得手不得手が全く同じ人間同士がチームを組んでも上手くいくはずがない、という基本的な事実に気がついたのだ。

私たちは似た人間であるが故にお互いの苦手分野をカバーできず、サポートし合うことができなかった。

 

私たちはどちらも末っ子で、甘えが強く我も強い。家庭内では二人して同じ役割をしたがって絶えず駆け引きとなり、負けて不本意な役割を押し付けられると鬱憤が溜まっていった。

今になって思うことだが、同じ感性を持つ似た者同士は友人のままでいるべきだったのだ。

そうしていれば、私たちは生涯を通じて良い友情を育んだに違いない。

 

似た者同士というのは馬が合うので一緒に居ると楽しいし、相手を理解しやすいという気安さがある。しかし、お互いの弱さまでよく理解できてしまうからこそ、相手のことが信用できない。

パートナーへの不信は心を病ませ、それぞれ酒や色に溺れるようになる。お互いに相手を追い詰めながら、互いに互いから逃げ合う姿勢までもが同じなのだから、歩み寄りなどできるわけがなかった。

 

そうやってすれ違いを重ね、それぞれに不満を溜め込みながら、私にとって元夫は「弱く、頼りない夫」になり、彼にとって私は「冷淡で、支えてくれない妻」と成り果てたのである。

破綻は来るべくして来ただけだ。

 

私たちが幸せになるための解決策は、パートナーシップの解消と、自分とは真逆の相手とタッグを組み直すことであった。

元夫は一足先に、遅れて私がそれを達成した後は、それぞれに人生と家庭の再構築に成功した。

お互いに安寧(あんねい)を得たことで、私たちは共に過ごした過去を恨まなくなり、現在では穏やかな関係が続いている。

 

泥水をすすって初めて分かる人生の味わいというものがある。

私自身は苦労したことで世の中を見る目も開かれたが、やはり結婚生活で余計な苦労はしないに越したことはない。

だからこそ、不幸にしかならないと分かっている結婚にはストップをかけたくなってしまうのだ。

 

そんな見本のように、不幸への条件が揃った結婚に飛び込もうとしている女の子がいた。

24歳の彼女は、人生で初めてできた彼氏と、人生で初めてしたセックスで妊娠してしまったのだ。

長くなるので詳細はまた別の機会に語るとするが、ここまで不幸になるカードがロイヤルストレートフラッシュで揃った結婚も珍しく、私をはじめとした周囲の女たち全員が説得にかかったが、彼女は聞く耳を持たなかった。

 

その頃の私は選挙事務所の手伝いをしていたので、60代の女性事務長と雑談中に、私が

「離婚することになると分かりきっているのに、ダメ男と結婚しようとしている困った子がいる」

と話をしたところ、事務長は目を細めて私を諭した。

 

「ええから、余計なことは言わんと、黙って見ちょきなさいや。かまんやか、離婚することになったって。

私も離婚しちゅうし、うちの娘も妙な男と結婚して、早ばやと離婚しちゅうで。ほんで、今は再婚して幸せになっちゅうわね。

ここの女はねぇ、離婚してからが人生で」

宮尾登美子の「楊梅の熟れる頃」という本は、高知の女たちの身の上話を書いた短編集だ。

ここに描かれた女たちは、誰もが大正の初めから戦前生まれで古風だが、その素直さと血の熱さ、強かに生きぬく様は、現代に生きる高知の女性たちと少しも変わらない。

 

短編の中の一編に、「おみきさんと司牡丹」という話がある。

男と破局し、浦戸湾へ身を投げて死にたいと思うほど辛い時でも、酒を呷(あお)るとたちまち目の前が開け、生きる望みが湧いてくるという酒豪の女性の物語だ。

 

高知の女たちはおみきさんのように酒が好きで、何かといえば飲んでいる。

しかし、いつも酒に酔ってはいるが、不幸に酔う女は見当たらないのである。

 


 

【著者】マダムユキ

ネットウォッチャー。

最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。

リンク:http://flat9.blog.jp/


 

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