「俺の嫁がいなくなった!」
近頃、一部中華SNSではこんな悲痛極まりないコメントが溢れている。
と言っても、中国全土でネトラレブームが起きているわけではない。
新垣結衣と星野源の結婚報道を聞きつけた中国男たちが、失意のあまり騒ぎ立てているんである。
もちろん、愛し合うふたりにとってこれは大変おめでたい話。
しかし、素直に喜べないどころか「俺のガッキーを返せ」と詰め寄る男がネット上に湧くのは日本も中国も変わらない。
「石原さとみに続いてまたひとり嫁がいなくなった」
「俺の嫁にはまだ永野芽郁、白石麻衣、西野七瀬、斎藤飛鳥がいる」
「星野源よ、お前みたいに女に困ってない男がなんで俺の嫁を奪うんだ」
これらの魂の叫びとも言うべきコメントの数々から分かるように、ガッキーは日本のタレントでありながら中国のファンに「俺の嫁」認定されているんである。
対して星野源は中国でライブを開いたことがあり、中華SNS「微博(ウェイボー)」の公式アカウントすら持っているのだが、注目度は圧倒的に低い。
それどころか中華SNSで「星野源」を調べると、自動検索で出てくるのは「星野源 渣男(クズ男)」という言葉。
一般的に、日本人女性は海外でやたらとモテるのに対し、男はおしなべて厳しい。
それにしたっていくら何でもクズ男は酷いのでは……と思ってしまうのだが、「嫁」を盗られた中国男たちの恨みは並大抵ではないのだろう。
では、なぜガッキーはこれほどまでに中国男のハートを掴むことができたのか?
というか、おそらく生涯直に見ることもなければ触れ合うこともない外国人を、心の中で己の愛妻としてしまうのか?
本稿ではその理由を探るとともに、反日とか言いつつ実は日本が大好きな中国人のココロを分析してみたい。
中国オタク層のハートを鷲掴みにしたガッキーの親しみやすさ
そもそも中国人は、現地で活動していないガッキーのことをなぜ知っているのか。
理由は簡単、日本のドラマは若者を中心になかなかどうして人気があるからだ。
超低料金で見放題の中華サブスクを利用する者もいれば、その金すら惜しみ違法アプリでタダ見をする輩もいる。
特に後者は、テレビ局やJASRACが知ったら卒倒間違いなしの圧倒的ラインナップ。
誰が作業をしているのか知らないが、放送されたばかりのドラマに中国語字幕がつけられ、とんでもない速さでアップされる。
しかも過去作もアーカイブ化されていて、日本のドラマだけでなくアメリカや韓国のものまでコンプリート。
そんな数あまたの映像作品の中で、中国人が注目したのはガッキーの代表作「逃げるは恥だが役に立つ」だったということだ。
とりわけ彼女は中国語で「宅男」と呼ばれるオタク系を中心に支持されたのだが、アニメや漫画好きの間では推しの二次元キャラを「俺の嫁」とか言ったりする文化がある。
そんなわけでドラマを通じて彼女の魅力に触れた野郎共が「ガッキーは俺の嫁」と言うようになったのだ。
でも、日本のタレントなんて他にいくらでもいる中で、なぜガッキーなのか。
中国には「哔哩哔哩」(ビリビリ)という日本のニコニコ動画もろパクリ的なサイトがあるのだが、そのニュース欄で分析が試みられていた。
記事のお題は「なぜ新垣結衣は中国のネット界隈で人気に火がついたのか」。
解説は結構単純で、清純萌えキャラで醜聞がなく、何より出演作が素晴らしい。
さらに指摘されていたのは、中国にはガッキーのようなタイプのアイドルがいないということ。
全く存在しないわけではないが、基本かの国の女性タレントは「雲の上の人」といったオーラをまとう超絶モデル系が多い。
アプリで加工してもここまで整わんだろ、とツッコミを入れたくなるほど端正な顔立ちに、パリコレモデルも顔負けの長身スタイル。
テレビで見ている分には目の保養になるが、自分とは遠い存在であることは否めない。
そんな自国のタレントに食傷気味だった中国ヲタにとって、ガッキーは海の向こうで活躍しているにも関わらず、親しみを持てる存在と映ったわけだ。
ちなみにそのサイトのガッキー紹介部分には「おそらく最も多く中国人の夫を持つ日本人女性」との恐ろしい言葉も。
果たして何人の中国男が嫁と捉えているかはもちろん不明。
だが、人口14億という母数を考えると、自称ガッキーの夫だけで人民解放軍の総兵数を上回りかねない。
そう聞くと、中にはきっとこんな感想を持つ日本の方がいるはずだ。
「ていうか、あんたら反日ちゃうの?」
もちろん中国人はガッキーを俺の嫁とか言っている者でも、国辱を忘れることはない。
自分は中国で暮らしているが、今でも足マッサージ屋なんかに行くと突然歴史論争になることがある。
店のオッサンいわく、「何で安倍はあんなに戦争が好きなんだ!」
いや、もう首相じゃないしそもそも日本はいま戦争してないですよ、などと言っても話が通じる相手ではない。
そういう昔ながらの反日オヤジに比べると、今時の若者は日本文化を浴びるようにして育っている。
さらに中国人にとってみればこっちの方が大国、もはや日本は脅威でないという思いもある。
学校では当然のごとく反日教育が行われており、それをネタに中国批判をする日本人は多い。
しかし考えてみれば分かることだが、大半の学生にとって授業よりも漫画やアニメ、ゲーム、さらに言えばAVの方がよっぽど楽しい。
刷り込み教育とソフトパワー、果たしてどちらが強いか。
一概には言えないが、日本のコンテンツを手軽に消費できる時代となった今、中国人=反日という単純な図式は当てはまらない。
かつての不倶戴天の敵である日本人だろうが、可愛いものは可愛い。
ガッキー結婚の報を聞き、自決しそうな勢いで嘆く男たちがごまんといるのは反日意識が和らいでいる証左と言えるかもしれない。
意外と義理堅い中国人は既婚者となっても追い続ける?
もっとも、あるNPOが行った調査によれば、中国に悪いイメージを持つ日本人の割合は約9割。
いわば現状は中国からの一方的な雪解けムードであり、中国政府が日本叩きの論陣を張った途端、間違いなく人民の反日魂は目を覚ます。
さらにガッキーに関して言えば、今はまだ中国人の間で話題に上がっていないが、実のところ炎上案件を抱えている。
最近の中国報道では新疆ウイグル自治区の民族問題がしばしば話題に上る。
特にアパレル大手のH&Mが過去に新疆産の綿花を使わないとアナウンスしたことにより中国で不買運動が起きたのだが、よりによってガッキーはつい最近H&Mのキャンペーンに起用されている。
さらにシンガポールの大手華字紙『聯合早報』が今年1月に報じたところによれば、「逃げ恥」の作中に「武漢で発生したコロナウイルス」というセリフがあるという。
コロナ起源の問題は中国にとって最も敏感なテーマ。
現在は祝福ムード一色だが、今回の件でこのニュースが蒸し返される可能性はなきにしもあらず。
中国では放映禁止の映像作品を「禁片」と言うのだが、「逃げ恥」が突然見られなくなった、なんてことが今後起きるかもしれない。
それでも中国人というのは意外に義理堅い人たち。
他人には恐ろしく冷たいが、一度親しみを持った相手には損得抜きでとことん付き合う。
とっくにAVを引退し、結婚して子供までいる蒼井そらが未だに中国で人気を誇るのは好例だ。
結婚報告をしたガッキーからしてみれば夫を自称する中国人なんぞ離れて欲しい存在かもしれないが、よほどの大炎上でもしない限り中国からのラブコールが止むことはないだろう。
最後にこの度の結婚報道に関する中華SNS上の熱い討論をウオッチしていて、自分の心に刺さったコメントを紹介したい。
「俺の嫁とか言ってるけれど、あんたたち彼女いたことあるの? そんな妄想してるヒマあったら自分の人生考え直したら?」
筆者も昔アイドルにハマっていたからよく分かるが、ガッキーに命をかけている男からすれば余計なお世話もいいところ。
でも、書かれていることはぐうの音も出ない正論である。
二次元キャラだろうがアイドルだろうが、愛することはいいことだ。
しかし、仮に生涯を賭けたとしても、その思いは絶対に結実しない。
むろんリアルな恋愛であっても、努力したところで成就しないことは普通にある。
しかし、ガッキーとゴールインすることに比べれば、はるかにたやすいと言っていい。
ぜひヲタ諸兄におかれては心の中の嫁とは別腹と考え、現実世界の恋愛にも目を向けていただきたいものである。

画像引用:経済産業省中国経済産業局「もうけの花道」
【著者】神坂縁
ライター、編集者、翻訳者。
週刊誌記者を経て某中堅出版社に入社。
雑誌の製作に携わっていたが、十数年勤めた会社で内紛が起こったことを機に退職&日本脱出を決意。
現在は国外の通信社に勤務し、アジアの政治・経済に関するライティングを本業としている。
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