彼を外見だけで表現するなら、デブったハゲです。
しかし、当時20歳だった私が50代のこのオッサンとのデートに応じてしまったのは、彼が本質的に”デキるオトコ”だったからなのでしょう。
その総資産は150億円。
私は、それほどにデキるオトコに口説かれ、愛人になりました。
今、私はIT企業でマネージャーとして働いていますが、
「ああ、これがのし上がるオトコとの違いなのか・・・」
と、うだつの上がらない凡人たちと彼をつい比べてしまいます。
「この人たち、こんな人生を何のために生きてるんだろう」と。
そこで今回は、一流のオトコの愛人として3年間過ごした経験を基に、上に立つ人間の魅力を綴りたいと思います。
お車代に10万円!?
彼と私が出会ったのは、銀座のクラブです。
当時、20歳で駆け出しホステスだった私は、彼がどんなステータスでどんな人間なのか知らないまま席につきました。
「僕はいつも朝ごはんはニチレイの冷凍の讃岐うどん、昼は吉野家の牛丼を食べるのがルーティンなんだよね」
ところが、初デートに連れて行かれたのは、フレンチフルコースが味わえる、海上レストラン。
そして帰り際、お車代と言われて封筒を渡されました。
中には10万円が入っていました。
それからというもの、私に語るのは話題の映画やマクドナルドの新作バーガーが美味しかった話など、庶民的な話ばかり。
そんな話を、時には有名寿司職人の握る極上の大トロを一緒に頬張りながら。
時には最高級ホテルでの、極上鉄板焼きディナーで語るのです。
「まるで、お姫様のような特別感を味あわせてくれている・・・」
決してお金を貰ったからではなく、豪華なディナーをおごってくれたからでもありません。
彼の人間力と魅力が、私をグイグイ惹きつけていったのです。
「これさえできれば、誰でも上に立てるよ」
それからしばらく経って、大学卒業の時期を迎えた私は就職活動で悩んでいました。
しかし、なまじ「デキるオトコ」の愛人として過ごしてしまったからなのでしょう。
普通のビジネスパーソンとして、ありふれた就職をしたいとは思えませんでした。
そこで、思い切って彼に相談してみたのです。
「私、ただの女性になりたくない!何かでのし上がりたいと思ってるんです。でも何も持ってません。どうしたらいいですか?」
「プレゼンテーション能力さえつければ、上に行けるよ。」
「プレゼンテーション?」
「うん。どんな事業にもどんなプロジェクトにも、発表の場は必ずある。大小なりとも。上司やクライアント、問わずだよ。」
「話術を磨けってこと?」
「簡単に言えば、そういうことかな。プレゼンさえしっかりこなせば、必ずチャンスは訪れる。」
「そんなもんかな・・・」
「リンカーンにキング牧師、日本で言うと天皇の演説だったり。人の心を掴むんだよ、そうすれば、必ず抜擢される。」
当時の私は、まだ彼の言っていることを理解できませんでした。
しかしその後、実践を積み上げて行くごとに理解できるようになります。
例えば就職面談って、自分をプレゼンすればいいだけの話なのです。
あとはよく見えるプレゼンテーションのノウハウを身に付けるだけ。
念願かなって第一志望に入社できた私は、それからも彼のアドバイスを胸に、プレゼーションする際のことだけを意識して、仕事に臨みました。
そして新卒80人を抱える会社で、最速の8ヶ月でマネージャーに昇格を果たしました。
のし上がりたいなら、プレゼンテーションを極めろ。
これはプライベートでもビジネスでも通用する、核心的なスキルです。
デキるオトコは別れ際も潔い
彼との別れは唐突でした。
理由は、私の仕事が忙しくなってしまったから・・・。
すると彼は一言、
「別れよう、お互いのためだ」
と私に告げてきました。
すでに愛人として彼と時間を過ごすようになってから、3年も経過していました。
彼もきっと、奥さんよりも私のことを心から愛していたはずです。
だからこそ、私の彼への想いが薄くなっていたことにきがついたのでしょう。
「わかりました」
そう答えると彼も笑い、何事もなかったかのように、その日のディナーを続けました。
本当に今までの日常と変わらない時間でした。
そして別れの時。
いつものように封筒を貰うと、中には100万円も!
お付き合いするようになってからは毎回30万円だったので、とても驚きました。
「僕は、君に癒しをもらっていた。数えられないほどのありがとうを言いたい。出会ってくれてありがとう。」
「私も、出会えてとても幸せでした。」
そして彼は、いつもと同じように運転手付きのハイヤーに乗って去って行きました。
あまりにもあっさり、いつも通りの別れ。
私もあっさりと状況を理解し、帰宅の途につきました。
思えば3年間、常にデートの代金やプレゼントなど私に素敵な思いばかりさせてくれたのにも関わらず、彼は常に「ありがとう」と言い続けていました。
彼は常に、私にとってギバーの精神で溢れていたのです。
これが150億円のオトコの魅力
彼との3年間を通して見えた、デキるオトコの特徴を一言でいうと、
・愛嬌があるのに、時に豪快
・プレゼンテーションが上手
・女性に対していつもギブの精神で溢れてる
ということになるでしょう。
また、社長だとも知らずに20歳の私が50代の彼に惹かれてしまったのも、この人間力だったと思っています。
惹かれるような人間力は女性との関係も、そしてビジネスにおいても上に立つ人間の資質なのかもしれません。

出典:文部科学省「おうちに妖怪はいませんか?」
【著者】タカハシヨシコ
ホームレス経験から銀座のNo.2ホステスを経て現在はIT企業のMGR。
人生経験豊富さがウリの20代後半OL。
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