AV男優のなり方にみる男の収入と人生 モテる男は「好きを仕事に」しない

男なら誰しも、AV男優に憧れたことがあるのではないだろうか。

傍目には、性行為をするだけでお金がもらえる夢のような職業。

それがAV男優である。

 

もっとも世の大半の男たちは、彼らをただ羨むだけで終わる。

顔出し上等で、全裸になり、己の性行為を人様に晒してメシを食う。

そういう人生の選択をできる者は、多いわけがない。また、男優のような性技を男が皆、持っているわけでもない。

 

しかし、これほど傍目には憧れの仕事でありながら、男どもがこの生き方を志さない最大の理由は、ひとつに尽きる。

それは、AV男優というものは、「こうすればなれる」という鉄板ルートがないことだ。

 

実際、AV男優とは狭き門である。

一体この日本に何人のAV男優がいるのか、参考になるサイトとして「ノンケAV男優サーチ」というものがある。

これは、女優のハダカよりも男の方をガン見してしまうゲイの皆さん用にまとめられたアーカイブ。

つまり男優になるということは、そっちの業界の人にも面が割れるということなのだが、サイトによれば「掲載数250名以上」とある。

 

引退した人やエキストラ程度の者も含まれているため、250人という数字を鵜呑みにはできない。

かつてアダルト雑誌の編集長を務めていた筆者の感覚としては、駆け出しの男優や兼業の人を外し、「これぞAV男優」と呼べる男となると100人いるかどうか、という印象である。

単純に人数だけで言えば、宇宙飛行士よりは多いが、プロ野球1軍選手よりも圧倒的に少ない。

まさに憧れてしかるべき職業と言えよう。

 

俺は男優になりたい、何が何でも己のムスコ1本で生きていきたい

そう心に誓う男性が、この記事を読んでいる人の中に、もしかしたらいるかもしれない。

そして本稿は、筆者が過去に見てきたプロ男優たちのエピソードを元に、AV男優になる方法をご紹介する。

 

そして、皆さんに問う。

「好きを仕事にすること」は、本当に正しいことなのか

と。

出典:農林水産省品種登録ホームページ「果実の色による熟度

 

「タダでもいいからヤりたい!」という気持ちではプロになれない

AV男優とひと口に言ってもタレントと結婚してしまうようなビッグネームもいれば、大人数モノの時にだけ呼ばれるエキストラ同然の者もいる。

何をもってAV男優と定義するかは難しいところだが、かつては「印紙男優」になって1人前、という考え方が存在した。

 

いまは税率が変わったのでこの話は当てはまらないが、AV男優の出演料は基本取っ払い。

その際、ギャラが3万を超えると領収書に収入印紙を貼らねばならなかった。

要するに3万以下の奴なんぞは男優を名乗る資格なし、というわけだ。

ちなみに、自分が作っていた媒体の男優料は一番安い場合で5000円であった。

 

そんな話を聞くと、ギャラなんて関係ない、タダでもやりたいと考える方もいるだろう。

情熱は買うし、業界入りのとっかかりとしてそのスタンスは悪くないが、それではプロにはなれない。

ノーギャラとは、平たく言えば自らのスキルの対価を求めないということだ。

端的に言って、それは仕事と呼べない。

 

AV男優は傍目から見ると毎日可愛い子とパコれて幸せ、といったイメージが強いかもしれない。

実際そういう人もいないわけではないが、プロ意識なくしてできる職業では決してないことをまずは頭に入れておいていただきたい。

 

さて、ここからがいよいよ本題。

筆者はかつて出版社勤めをしていた頃、アダルト誌を月に最大4冊出していたことがあり、付録DVD用にアダルト動画が必要だったため男優さんとは割とお付き合いが多かった。

有名AVメーカーのように潤沢な予算はないため、使えるのは駆け出しの男優か、金にうるさくなく出てくれる人に限られる。

 

自分が彼らに決まって聞くことは、どうやって男優になったのかということだった。

仕事は関係なく、完全に個人的関心である。

ところが軽く話を振っても、言葉を濁して語らない。

彼らは皆フリーランサー、商売敵は少ない方がいいと思っているのか。それともあくまで個人的エピソードであり、再現性がないので教えても意味がないと考えているのかは分からない。

 

そこで折れずに突っ込んで聞くと、パターンとしてはやはり自分でAVメーカーの門を叩いた人が多い。

「童貞筆おろし」

「素人男のお宅を訪問」

といった内容で面が割れていない男優が必要となることもあれば、男100VS女子1人、なんていう作品でとにかく人数がいる場合もあったりする。

メーカー側にはエキストラを含めて新人男優の需要はある。

 

とはいえ手当たり次第に男優募集なんてかけた日には、ヤバい奴が来るのは必定。

ゆえにメーカー自ら公式サイトで集めたりすることは今どき少ない。

中には、ネット上にある

「男優募集!未経験者歓迎!日払いOK!」

なんてモノに申し込み、自分が主演のゲイビデオで男優デビューを果たしてしまった知人もいる。

お勧めできない。

 

モノの大きさやテク以上に社会常識が求められると心得よ

人生の進路を男優に定める男というものは、大概は突破力を持っている。

募集していようがしていまいが、AV制作会社やメーカーに直電くらいは朝飯前。

そして彼らは打たれ強い。

何度門前払いをされようが、ヤリたい気持ちが勝る者でないとこの業界には入れない。

 

数年前、男優になるために公務員をやめて上京し、弊社に売り込みに来た男がいた。

父親が消防士で自分も同じ仕事に就いたはいいが、どうしても男優になる夢が諦めきれなかったという。

親からすれば勘当モノの所業である。

 

こういう向こう見ずなタイプは現場でやらかすことが多く、普通ならお引取り願うところ。

しかし、一応社会人経験があり頭はマトモだったので採用となった。

 

AV業界というと無法者の群れという印象を持たれる方も多いことと思う。

そういう側面はたしかにあるが、同時に一般的な社会常識も意外に求められる。

いくらモノがでかかろうが、時間やルールを守れない者は使えないのだ。

 

オヤジ男優の中には遅咲きが多い。

もともとはカタギの仕事をしていたが、飲み仲間なんかにアダルト業界で食っている人間がいて、たまに誘われて出ているうちに男優が本業になったという方も少なくない。

こういう手練の男優は、アダルト業界しか知らない&己の欲に走りがちな若手よりも安心して現場に呼べる。

もしこれを読んでいる貴方がAV男優を志しているのなら、燃え盛る情熱や性行為の技以上に、社会人としての基本が必要であることを胸に刻んでおくといい。

 

結局どうすればAV男優になれるのか?

AV男優になるためのより現実的な方法としては、テクも経験も求められない大人数モノの作品にエキストラとして潜り込むか、AV制作会社に勤めてADから下積みをすることだろう。

前者はいわゆる「汁男優」というヤツで、業界ヒエラルキーの最底辺に位置する者であり、募集も割とすぐ見つかる。

 

そんなものになってどうするのと言うなかれ。

スタートはその他大勢であっても、何かを持っている人間はキラリと光るものである。

実際、この最低カーストから下剋上を成し遂げて立派に一本立ちした男優は存在する。 

 

もうひとつのAV制作会社だが、筆者の周囲にいる男優さんで多いのはこのタイプ。

ADというのはなんでも屋であり、人手が足りなければ出演やむなしというケースもある。

ただ、仕事として考えた場合、世間体がよろしくない割に給料は安く、仕事はキツい。

そして肝心なのは、制作会社に勤めたからといって男優に必ずなれるわけでは決してないことだ。

門戸は開かれているとはいえ、筆者としては進んで勧める気にはなれない。

 

最も今どきな手段としては、モデル探しから監督、男優まで全て自分でやってしまい、海外のアダルト系プラットフォームにアップしたら手っ取り早いだろう。

ただ、このパターンはお縄にかかる率高し。

海外サーバーで匿名だからといってノーモザイクで押し切ったり、モデルの年齢確認を全くしなかったりで大事故に陥るのがありがちなオチである。

 

結局、いずれの道でも言えることだが、AV男優という職業は決して楽なものではない。

単なる女好き、AVマニアという程度の意識では到底務まらないのだ。

 

業界入りするとAVを見るのも嫌になる!?

中途半端に「好き」を仕事にすると、もともと愛してやまなかったものを嫌いになってしまうことがある。

これは男優に限らず、あらゆるフリーランスの職業に言えることだろう。

 

元編集者である筆者の経験則で言うと、一流と呼ばれる作家やライターの中には「好き」を越えて、常に何かを書いてないと死ぬレベルの人が多かった。

その上で才能を持ち合わせているゆえにプロとして食えているということだ。

 

AV男優もそれと同じ、と書くと作家さんから怒られるかもしれないが、たとえ鳴かず飛ばずの男優であっても性行為に対して尋常ではない思いを持っている。

「男優」という言葉が表す通り、彼らは演者であって自分が楽しむ目的で性行為をしているわけではない(そういう人も中にはいるが)。

 

想像してほしいのだが、撮影現場では

「もっと勃てろ!」

「痛いんだよ下手くそ!」

などと、監督や女優に文句を言われながら、顔も知らない他人に見せるために腰を振るのである。

本来なら三度の飯より好きな性行為を仕事にしてしまったがゆえに、思い通りにできないストレスを抱えつつ、彼らは日々パコっている。

 

さらに、撮影現場ではさまざまなハプニングが付き物。

そして撮影現場でもっとも立場が弱いのは男優だ。

トラブルは全て男優のせいにされ、全裸のまま立たされ、おっかないマネージャーに詰められる。

さらに女優の嫌な面を見てしまうことなんて日常茶飯事。

それでもなお、怒られながら勃起状態を維持しなければならないのである。

そんな自信が、あなたにあるだろうか。

それができる者こそ、AV男優という存在だ。

 

何事であれ、己の愛したものに幻滅するほど悲しいことはない。

「僕、性欲が人一倍強いんです」

なんてノリで挑戦しようとしているのなら、やめておいた方がいい。

ナンパなり風俗なりでそのエネルギーを発散した方がよほど楽しく、貴方にとって幸せである。 

それでもなお男優を羨ましいと思えるならば、アクションを起こそう。

人生を全て、性行為に捧げる覚悟を胸にしてーー。

 


 

【著者】神坂縁

ライター、編集者、翻訳者。

週刊誌記者を経て某中堅出版社に入社。

雑誌の製作に携わっていたが、十数年勤めた会社で内紛が起こったことを機に退職&日本脱出を決意。

現在は国外の通信社に勤務し、アジアの政治・経済に関するライティングを本業としている。