盗撮で逮捕された男 その憎むべき手口と憎みきれない悲しい動機とは

 

世の中にはさまざまな性癖があります。

中には他人に迷惑をかける性癖もあり、その1つが盗撮でしょう。

今回は、その盗撮で逮捕された男の裁判を傍聴したのですが、被告の心の葛藤に胸が痛くなる思いでした。

 

盗撮やのぞきは間違いなく犯罪です。

被害者にとっては、変態に見られるという気持ち悪さだけでなく、ネットで拡散され世界中に公開される危険もあります。

絶対にやってはいけない犯罪です。

 

それでも、裁判を傍聴していくうちに

「なんとか罪が軽くならないだろうか・・・」

という悲しい気持ちになりました。

そんなことを考えさせらた男の裁判です。


出典:内閣府「若年層を対象とした性的な暴力の啓発

 

子供と行ったプラレール博で盗撮!その手口とは

迷惑防止条例違反の罪名の裁判でした。

傍聴席に入ると被告人がすでに着席しています。細身のスーツ姿の男性。いたって真面目そうに見えます。年齢は40代でした。

裁判官が入廷し裁判が始まります。

 

検察官が被告人の罪状を読み上げました。

迷惑防止条例違反とは、つまり盗撮のこと。

被告は靴の先に小さなカメラを仕込み、エスカレーターで前の女性のスカートの中を盗撮してしまったのです。

 

もともと被告は鉄道模型が趣味であり、小さなカメラはその関係で購入していました。

自分で作ったジオラマの世界。

その中を進む小さな鉄道の先端につけるカメラです。

 

被告はその技術を盗撮に流用し、靴の先端のカメラからスマホへと画像データを飛ばして下着の盗撮を始めました。

この手法は、人気テレビ番組の警察24時で知ったようです。

 

被告が現行犯逮捕されたのは、家族でプラレール博に出かけていた時でした。

被告の子供は5歳です。

鉄道模型が好きな被告が、妻と子とともにプラレール博を楽しむ姿を想像すると、仲睦まじい家族が浮かんできます。

被告はよりによってそんなに時に、盗撮に及んでしまいました。

 

犯行に気がついたのは、プラレール博の従業員です。

被告は「トイレに行く」と言ってエスカレーターに乗り、前の女性のスカートの中を撮影し始めましたが、すぐに取り押さえられました。

証拠は被告の靴の中にあるのですから、言い訳不可能です。

妻は驚いたでしょう。5歳の子供は何が起こったのか理解できなかったかもしれません。

盗撮の前科持ちだったこともあり、正式裁判にかけられてしまったのでした。

 

わかっちゃいるけどやめられない

被告人の同種前科は2犯。

いずれも盗撮で30万と50万の罰金を支払っています。

盗撮を止める意思はあるようで、20回以上精神科に通いカウンセリングを受けていました。

7年間盗撮をしなかったことから効果はあったのかもしれません。

結婚し子供も授かったことも大きかったと思われます。

 

被告は逮捕されるまで5回ほど撮影してしまいましたが、データはすぐに消去していました。

盗撮することそのものが目的で、盗撮の瞬間に性的快感を得るという性癖なのです。

例えは悪いかも知れませんが、例えば世の中には、山登りでしか精神的に癒されない人がいます。

その人に「登山はこれから違法だから登らないでね」と伝えても、すぐに止めることなど難しいでしょう。

それと同じように、被告にとって盗撮とは、他に代替が効かない方法だったようです。

 

被告の抱えているストレスを理解できるのか?

裁判が進み、弁護士による被告人質問が始まりました。

 

「どうしてやってしまったのですか?」

「・・・ストレスから、やってしまいました。」

「ストレスの原因は何ですか?」

「実は、妻がガンになってしまって・・・。」

「具合はだいぶ悪いのですか?」

「最近、転移が見つかり抗がん剤治療を受けています。」

「治療費はどうしているのですか?」

「・・・私の稼ぎが頼りです」

 

そんな状況で盗撮をするとは、正直理解ができません。

しかし被告にとっては、愛する妻が命の危険に直面しているストレスに耐えかねて、唯一の癒やしである盗撮に舞い戻ってしまったという動機は筋が通っているのでしょう。

弁護士が更に続けます。

 

「自分の妻が盗撮されたらって考えたらどう思いますか?」

「・・・怒りを感じます」

「もう盗撮しない為にはどうしますか?」

「これからは携帯を妻に預け、買い物では子供と手をつなぎます」

 

これは、刑を軽減してほしいという弁護士による法廷戦術です。

確かに、被告はどんなにキツイ仕事でも逃げ出すことはできません。

家族のためにお金を稼ぐ必要があり、そして仕事のストレスを癒してくれるはずの妻は重病です。

子供もまだまだ手がかかる5歳。

許されざる犯罪であることは間違いありませんが、被告の背負っている環境を想像し、私は苦いつばを飲み込みました。

 

普通であることに自信を持つことができた

私は普通の性癖をもつ普通の男です。

かわいい女の子が大好きで、グラビアアイドルとかも大好き。

いたって平凡な趣向です。

趣味も平凡で、ちょっと変わっていると言われるのが裁判傍聴に通うことぐらいです。

それも合法な趣味であり、堂々と「裁判傍聴が趣味です」と他人に言えます。

 

しかし、世の中には被告の様な生き方をせざるをえない人がいます。

どうしても「してはいけない」ことでしか癒されない人。

その人の生き方は苦難の連続だと知りました。

 

平凡であること、普通であることはすばらしいことです。

普通に異性を性の対象と捉え、気持ちを抱くことができるのです。

それは誰からも非難されない事であり、被告にとってうらやましいことなのでしょう。

普通で平凡。

それはとても価値のあることなんです。

そのことを教わった裁判でした。

 


 

【著者】野澤 知克

自営業(飲食店)を営みながら、ふとしたきっかけで裁判傍聴にハマった傍聴ライター。

現在は専業ライターとして、裁判所に通う毎日。

事件を通して人間の「生き方」と向き合ってます。