友人Aは、自称「ネットアイドル」でした。
魅惑的なネコ目と、凹凸の激しい豊満なボディが、彼女の自慢です。
そんなAからある日、連絡がありました。
「合コンていうか、私の人生を賭ける夜になるから、来てくれない?」
合コンの男性陣は、芸能事務所社長、大手広告代理店営業マン、映像ディレクターというメンツ。
つまり、Aにとっては、自分を売り込むための“ビジネス合コン”となるのです。
そのため、女性陣のメンバー構成も、非常に気を使う必要がありました。
まず、私は安牌(アンパイ)です。
見た目はボーイッシュでキャラも男性寄りのため、男性陣に媚びることもなく、引き立て役としては最適です。
問題はもう一人の女性でした。
今回の主役はAなので、あまりに容姿端麗で目立つ女性はNGです。
かといって、男性陣のキャリアと釣り合わない女性も、Aの評価を下げてしまうでしょう。
そこで、「ちょうどいい」と思われるYに、白羽の矢が立ちました。
Yは、私の大学時代の同級生。
飛びぬけて美人ではないけれどブスではない、自己主張もしないけれど自分の意見は持っている、そして何より
「空気の読める」
万能な女性です。
Aは芸能界デビューを目指しており、今回の合コンがいかに重要な位置づけとなるかを、Yと私に延々と説明してくれました。
その結果、
「向こうはプロなので、あまりにベタな売り込みはしないほうがいい」
「Aの活動状況を示しつつも、素人っぽさを出したほうが、狙った感が少ないのはないか」
など、本来の合コンの趣旨から外れ、Aをいかに上手く売り込むか、という作戦会議にまで発展しました。
――金曜日、合コン当日。
場所は、西麻布のイタリアンレストラン。
週末を控えたビジネスパーソンらで店内は賑やかでした。
Aを売り込みたい私たちと、女性陣のお手並み拝見といったところの男性陣との、戦いの火ぶた切られます。
「AさんのYouTube見ましたよ。なかなか面白いですね」
芸能事務所社長が最初に話題を振りました。
「ありがとうございます!もっと多くの人に見てもらえるように、活躍の場を広げたいと思っています!」
「なるほど。今後の活動は、どういった方面で考えているのですか?」
「夢は、やはり、芸能界です。しかし、まだまだ下積みが足りないので、今は経験を積む時期だと考えています」
「なかなか謙虚ですね、頑張ってください。・・ところで、Yさんはいま、お仕事は?」
急に話題を振られ、一瞬、面くらったYでしたが、すぐさま柔和な笑顔で返答しました。
「医療事務です。」
「ほう、医療事務ですか。人前に出ることは、得意ではないですか?」
「苦手ではありませんが、できれば後ろからサポートするほうが、向いていると思っています」
そう無難に答え、歓談は続きました。
2時間でセッティングされた合コンが終盤に差し掛かった頃、映像ディレクターがAに質問をしました。
「Aさんは、演技に興味はあるんですか?」
「はい!もちろんです。どんなことでも挑戦してみたいと思っています」
「多少、きわどい仕事でも大丈夫ですか?」
「すべて経験だと思い、いただける役は何でもやってみたいです!」
私はこの時点で、一抹の不安を感じていました。
外野的な位置づけで参加している私だからこそ、この5人のやり取りから、微妙なパワーバランスと方向性が見えてきました。
大手広告代理店Dのクライアントは、芸能事務所と映像ディレクターの会社です。
さらに、映像ディレクターの会社は、アダルトビデオの制作をしています。
そして、芸能事務所に所属するも仕事の少ない女性タレントが、映像ディレクターの会社からAVデビューしている、といった流れの様子。
現時点で、芸能事務所社長が気に入っているのは、AではなくYです。
「白にも黒にも染められるタレントがほしい」
と発言した社長の目は、Yを真っすぐ見つめていました。
問題なのは、映像ディレクターがAを口説きにかかっていることです。
このままでは、Aの目指すべき方向が変わりかねません。
しかし私には、見守る以外、どうすることもできませんでした。
仕事を辞めた2人の友人
一か月後、私はYに呼び出されました。
「実はね、あの社長の事務所で演技の勉強をしてみようと思うんだ」
やはりあの合コンの後、社長からコンタクトがあり、事務所への所属を強く打診されたとのこと。
人当たりも良く、フレキシブルな対応のできるYは、社長が求めるタレント像に近かったのかもしれません。
そして、撮影したての宣材写真を見た瞬間、あの社長の千里眼に驚きました。
そこに写るYは、私の友人である、ごく普通の女性ではありませんでした。
――これが「化ける」ということか。
目下、心配なのはAでした。
あれ以来、なんの音沙汰もなく、Yの進退についても知らないはずです。
そのことをYに話すと、言いにくそうに現状を教えてくれました。
「Aね、いまセクシー女優してる、あのディレクターの会社で」
――あぁ、やはりそうなったか。
合コンから一か月後、2人がそれぞれこうなることなど、誰が予想できたでしょう。
とくにAは、希望に満ちた「大きな未来」を手に入れるため、あの2時間に挑んだはずです。
それが今や、AがいるべきポジションにYがいて、少しゆがんだ形でAの新たなキャリアがスタートしたのです。
人生は、出会いと別れの連続です。
たとえ合コンといえども、この2人のように、それが「人生の転機」となる可能性もあるのです。
打算的な合コンより、純粋に楽しむだけの合コンがどれだけ素晴らしいか、つくづく思い知らされた「金曜日の夜」でした。

出典:文部科学省「高校生のための安全読本」
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【著者】浦辺リカ
猟銃・空気銃所持許可、二級ボイラー技士、アーク溶接作業者、ブラジリアン柔術紫帯
